「理解」でいいなら苦労しない【H×H】 (ページ10)

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　一次試験が終了したのは、私がようやく歩けるようになった頃だった。その間クラピカさんたちとは話していない。ただ一人、ゴンくんの声には頷くことで反応していた。ほとんどが「大丈夫そう？」などと私の体調を案じるものなのが少し悔しいのだが。

　二次試験はまたもや試験官の後をついていくこと。……と、ここまでで私はある勘違いをしていたことに気付いた。

「これ、まだ一次試験だったんですね」

　ヌメーレ湿原で隣を走るクラピカさんが「やれやれ」と言いたげにため息をついた。

「試験官は最初から『一次試験は終了』だなんて言っていなかっただろう」
「いわれてみればそうかも。私が勝手に脳内変換していただけ、かな」

　そう、私は普通に勘違いしていたのだ。だからある意味これは続一次試験、という感じだろうか。

　気を取り直して。続一次試験はまたもや試験官の後をついていくこと。先ほどまでと違うのは場所。湿っぽい地下道から階段を駆け上がって外へ出てみれば、目の前に広がるは濃霧漂う湿原だった。試験官の話によれば、ここにはどんな手を使ってでも獲物を食らおうをする生き物が住んでいるらしい。実際、その説明の直後に「この試験官は偽物だ」という力強い声が私たちに飛んできた。声のした方を見てみると、一人の男性がぐったりと伸びた試験官のサトツさんそっくりの猿を掴んでいた。

　オレが本当の試験官だ。ここの人面猿は人に扮して油断したところを食らう。そうやってハンター試験を受けに来た人間を一網打尽にするつもりだ。

　一瞬、受験者の中にどよめきが走る。「一瞬」だ。

　数枚のトランプが、私たちの間に湧いたどよめきを切り裂いた。

　一部は人面猿と自称本物試験官に。もう一部は、今まで私たちを先導してくれていたサトツさんに。

「ぐあっ！！」

　この叫びは自称本物試験官から聞こえたものだった。サトツさんはというと、今までとなんら変わらない表情と姿勢で立っている。手にはトランプがあった。

　これでどっちが本物かが明らかになった。

「奇術師ヒソカ……！」

　誰かがそう呟いた。全員の視線をたどってみると、まさに「奇術師」という風貌の男性が貼り付けたような笑みを浮かべていた。貼り付けたような、と感じるのは彼見た目のせいだろう。

　サトツさんからは注意を受けたヒソカさんだったが、確かに彼の方法が相手の嘘を暴く良い方法ではある。

　試験官への攻撃は厳禁、か。