「理解」でいいなら苦労しない【H×H】 (ページ6)

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　魔法辞典内の文字は特別な文字で書かれている。それは、魔法使いだけがわかる文字。魔法学校以外では教えない、魔法界共通語。だから、内容が読めない分にはなんの疑問の持たないのだけれど、表紙もとなると話は違う。表紙だけは、その国の母国語で書かれているのである。

　魔法は魔法学校の生徒か卒業生しか使えない。逆に言えば、それ以外の人間は使ってはいけないのだ。魔法書は完成された時点で魔法学校のピアスの着いている人間以外は開けない魔法がかけられる。魔法界共通語は魔法使い以外に知られてはいけない。そのため、不特定多数に見られる表紙だけは国の言葉なのだが……。

「よめ、ない、の？」

　切れ切れの言葉で問いかける。二人はそろって頷いた。ちょうど近寄ってきたレオリオさんにも見せてみたが、読めないと言われた。

　不思議な話だ。話す言葉は通じるのに。

「そ、う」

　そ、そろそろマズイ。私は三人の目も気にせずに杖を取り出し、先を上に向けて祈るように握った。ちなみに祈るように握る必要はない。杖先が自分に向けたかっただけである。

　魔法辞典にはこう書いてあった。

「トイレットペーパーの芯を繋げるイメージで……！」

　なんてユーモアの溢れる文章なのだろう。これだからこの魔法辞典は好きなんだ。

　そして、周りに聞こえないように囁くように唱える。

「『変換』！」

　体内でカチリとなにかがくっつく感じがした。途端、楽になる足、腕、胸。なんとか成功したみたいだった。この魔法が初級魔法でよかった。

「A、顔色よくなった？」
「うん、なんとか」

　この魔法が発動している最中は魔法が全く使えないのだけれど、背に腹は代えられない。私はしっかり前を見据えて、地面を蹴った。

　負けられない。負けたくない。たとえ不本意な受験でも、受けるからには受かってやる。元の世界に帰る方法を探すのは、この試験が終わってからにしよう。