「理解」でいいなら苦労しない【H×H】 (ページ5)

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　ハンター試験最初の課題は試験官に着いていくこと。その際、誰一人ほうきに乗らないあたり、本当にこの世界には魔法がないんだなと痛感する。

　棒ならなんでもいいんだけどな、と辺りを見渡しながら私は走っていた。当然棒状のものは何一つなく。魔力と体力は紙一重で、両方とも消費すれば疲れるものだ。

　そして私は、そこまで体力のない魔法使いだった。

「A、大丈夫？辛そうだけど」
「大丈夫と、言え、れば、いんだけど……」

　隣を走るゴンくんが心配そうに顔を覗きこんでくる。その横で、先ほど出会ったクラピカさんとレオリオさんもちらりとこちらを見る。少々レオリオさんは疲れているようだった。

　とにかくブレザーが暑いし重い！本一冊入れている自分がとんでもないアホに思えてきた。しかし私にとってこの魔法辞典は相棒同然。どんなに重たくても手放す気にはなれなかった。

「……ん、辞典？」

　スピードを少し緩めてブレザーから魔法辞典を取り出す。この魔法辞典は、収録されている魔法の数なら国の中でもトップを争うレベルだ。ただ、如何せん文章はすごく簡潔で、呪文と超簡単なコツくらいしか書いていない。というのも、この辞典は基礎がしっかりしている人間でないと使いこなせないとまで言われている代物なのだ。逆に言えば基礎しっかりできていないとただの分厚い本なのだが。

「確か、」

　自分の魔力を体力に変換できる魔法があったはず。

　慣れた手つきでページをめくる。確かあれは初級魔法。だからなんの心配もなくできるはず。

　できる……はず！

　私が該当ページを探しているとき、ゴンくんが興味津々に声をかけてきた。「ねえ、」

「それ、なんて本なの？」

　ゴンくんには申し訳なかったのだが、私は一刻も早く該当ページを探したかったため、返事はおろか視線さえも返すことなく表紙だけ彼の方を向けた。それで理解してほしかった。

　……ということをしてから、私はあることに気がついた。血の気が引いていくのを感じた。走っていて身体は熱いはずなのに、心臓部分は急速に冷えていく。

　ねえ私、なんでこうも簡単に魔法辞典を見せたの？魔法のない世界で。

　どうにか弁解しないと、と思ってゴンくんの方を見ると、彼は想像と違った表情をしていた。

「んー、それ、何語？見たことない文字だ！」
「えっ！？」

　クラピカはこの言葉見たことある？とゴンくんはクラピカさんを呼んできた。彼も首を横に振った。