何回輪廻転生しても【ut】 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:2,123 hit

#6 ページ6

.

『大先生……』

今もまだ、大先生が死んだことを受け入れることが出来ない。

私が死んだとき、私を救ってくれたのは大先生だった。彼がいなかったら、私は生き返ることすら出来なかった。

今度は私が大先生を救えたら…なんて、魔法使いじゃないのに馬鹿みたいな期待をしてしまう。

『自分の足で歩け、ってことなのかな』

私以外いない家で呟いた言葉は、思った以上に反響し、私の耳に届いた。

もし、本当にそうなんだったら、大先生が死ぬ必要なんて無かったのに。
私はもう、待つだけの人じゃない。

『…もう1回会いたいなぁ、』

今度は響かず、静かに消えていく。
どうして、こうも違うんだろう。

彼を求めているのは私だけじゃない。
それを分かっているからこそ、余計願う。

『鬱先生、大好きです、って』

あの日、私は鬱先生に好きだっていう想いを伝えるって決めた。

鬱先生は私を生き返らせようとしてくれた。
私なんかに、って言ったら、私だから使いたいんだ、って。
気付いたら、私は彼を好きになっていた。

結局、言えたのかはよく覚えていない。
あの日はテンションが高くて、気がついたら次の日の朝になっていた。

しっかり隣には大先生がいて、あれは夢じゃなかったんだ、って思えた。

今さら忘れるなんて出来ないし、もし会えたとして、それでもいなくなったら許せない。
それくらい、今の私に鬱先生は大切な存在。

『…あの森にいたりして』

今の私には幽霊は見えない。
でも、鬱先生がそこにいれば、向こうから干渉してくれるかもしれない。

あの日、鬱先生には「霊界と此方の世界の関わりは絶たれた」って言われたけど、もしかしたらまだあるかもしれない。

…行こう。
行くだけ行って、当たって砕けよう。

もし彼がそこにいなくても、私はきっと後悔しない。寧ろ、そこに行く機会があるだけ嬉しい。

久しぶりに行くし、家の整理もしようかな。
あの人も今はもうあの家にいないらしいから。

『よし、行くか』

.