007:六年生 ページ18
007:六年生
ーー2003年4月
私は両親に頼み込んで私立中学校の受験を許してもらった。
言わずもがな、稀咲くんと同じ志望校！
好きな人と同じ学校に通いたいというのも本音だけど、目的はもちろん彼を不良にしないためだ。
あの半間さんすら知らない稀咲くんが不良になったキッカケは、タイムリープしてから二年経った今も分かっていない。
だけど“前回”の彼が、分かりやすく変わりだした時期を私は知っている。
中学生になってからだ。
となれば絶ッッッ対に同じ中学へ通いたい！
…というわけで気合十分で始まった新学期。
「ばばーん！ケータイを買ってもらいました！」
「……」
「……」
稀咲くんと半間さんの冷めた視線を一身に受けながら、私は新品のケータイを頭上に掲げて仁王立ちした。
我が家のリビングに三人いるとは思えないほど静かな無言が続く。
「い、いや、何か言ってくださいよ。ばばーんとか言っちゃって恥ずかしいじゃないですか」
「ケータイひとつでよくそこまではしゃげるな」
「稀咲くん辛辣！」
このピンクゴールドの折りたたみ式ケータイは、“前”なら中学生になってからしか買ってもらえなかった物だ。
それを、勉強を頑張っているからという理由で買ってもらえた喜びをふたりはわかってくれない。
ま、まあ、稀咲くんなんていつの間にか私より先にケータイ持ってたし…。
半間さんなんてケータイどころかバイクまで持ってるから、今更大したことじゃないんだろう。
免許？未来で取ってると信じてますよ半間さん。
「なぁなぁ？腹減ったからなんか作れよ、A」
「分かりましたから話聞いてください」
ソファーでナマケモノになってる半間さんをあしらって気を取り直した私は、咳払いをして居住まいを正し、少しだけ緊張しながら口を開いた。
「稀咲くん！連絡先教えてください！」
“前回”は稀咲くん自身も、稀咲くんを取り囲む不良達も怖くて聞けなかったこと。
普段の会話だって全て奇跡のような出来事だって思っているし、連絡先を聞くなんてちっぽけなことだけど。
これは“前”の私が稀咲くんとすれ違うたびに言おうとして、言い出せなかった言葉だ。
「ああ、いいよ」
呆気なく、あっさりと返ってきた言葉に目を輝かせ唇を噛む。
なんとなしにケータイを取り出し、赤外線で連絡先を送る操作をしている稀咲くんを見ていたらなんだか鼻の奥がツンとした。
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もずく(プロフ) - あさん» 設定やセリフなど戸惑いなく読んでもらえるよう気をつけていたので、そう言っていただけて安心しました。全話一気読みお疲れ様です！稀咲夢を楽しんでもらえて凄く嬉しいです！コメントありがとうございます。 (2022年1月23日 21時) (
レス) id: 46c3a4c6cb (このIDを非表示/違反報告)
あ - 夢小説特有の変な設定やセリフがなくて好きです。読みやすいし、30分で全話読んでしまいました笑稀咲の夢小説は見たことがないです…斬新でいいですね！ (2022年1月23日 16時) (レス) @page37 id: 9fc44877f3 (このIDを非表示/違反報告)
もずく(プロフ) - 塩キャラメルさん» 楽しんでいただけて凄く嬉しいです！この小説を書き始めて本当によかったです。稀咲夢が増えることを願わずにいられません。距離感や夢主の性格などは特に気をつけて書いていた部分なので本当に嬉しいです。コメントありがとうございます！これからも更新頑張ります！ (2022年1月23日 11時) (レス) id: 46c3a4c6cb (このIDを非表示/違反報告)
塩キャラメル(プロフ) - 稀咲落ちの小説少なくて探してたんですが、とても面白い作品を見つけることができて見て良かったな、と思ってます。稀咲との距離がだんだん近付いていく感じとか、夢主ちゃんの性格もすごく好みで読むのが楽しかったです。体を壊さないように、更新頑張って下さい。 (2022年1月23日 9時) (レス) @page35 id: 28c0fa0ca6 (このIDを非表示/違反報告)
もずく(プロフ) - 香さん» 好きと言っていただけてとても嬉しいです！応援していただいていると思うと頑張れます。コメントありがとうございます！ (2022年1月22日 10時) (レス) id: 46c3a4c6cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もずく | 作成日時：2022年1月13日 0時
