・エピローグ ページ23
『…そう、そうして。…うん。え？母上に代わる？』
ESの地下ライブステージへ通じる廊下に声が響く。
黒を基調とした衣装の裏地は藤色。
水のように流れる髪は黒で、少しうんざりとした瞳は赤と青のオッドアイ。
『あーー…分かってますよ母上。ちゃんと来月帰りますから。ちゃんと守ってるでしょ？月に1度は帰るって。……ええ、はい』
スマホを耳と肩で挟み、書類をパラパラとめくるその後ろ姿は凛としていた。
「Aくん！遅れちゃうね！」
『分かっとる！ジュンたちと先行ってて！』
向こうから彼に声をかけた2人組が、ちょっと困ったように顔を見合わせている。
けれど彼はそれに気付かず、耳元から聞こえるたった1人の肉親の声に集中しているようだった。
『…ええ、母上。………はい。幸せですよ。俺はここで幸せです。母上が認めて下さって良かった』
彼が微笑んだ。
本当に、幸せそうに。
「Aくんってば！」
『もーちゃんと行くって言うてるやろ！…はい、母上。これからライブで…』
彼が書類を置いて、左耳のインカムを触る。
インカムで隠すように付けられたノンホールピアスは、彼の母親が先日送ってきたもの。
藤の家紋をかたどった、世界にたった1つしかないノンホールピアス。
『父上にもお伝えください。ちゃんと見ててくださいねって』
彼の仲間がしびれを切らして迎えにきた。
手を伸ばして、行こう、と声をかけて。
『母上も、ですよ。…幸せです、とても』
彼が通話を切って、スマホを机に置いた。
「んもう！遅いね！」
『堪忍なぁ』
「まあまあおひいさん。お母さんだったんですよねぇ？」
「……お母さんなら仕方がないね」
「さ、切り替えて行きましょう皆さん！」
『おん！』
光の向こうにEdenが消えていく。
最後に、Aが振り返った。
『行ってきます』
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魚(プロフ) - あめんぼさん» ご愛読頂きましてありがとうございました！ (2021年8月21日 17時) (
レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
あめんぼ(プロフ) - とても面白かったです。 (2021年8月20日 20時) (レス) id: 446f4af563 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - 初坊さん» ご愛読頂きましてありがとうございました！そう言っていただけて嬉しいです！ (2021年8月19日 19時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
初坊(プロフ) - 完結、おめでとうございます！とても素敵な作品でいつも更新楽しみにしていました。この作品にであえて本当によかったです！ (2021年8月18日 19時) (レス) id: 8f51cef084 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - さばかんさん» ご愛読頂きましてありがとうございました！そう言っていただけて嬉しいですー！新作でもよろしくお願いします！ (2021年8月18日 17時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：魚
| 作成日時：2021年8月11日 12時
