バッドエンド【em】 ページ11
『……………もう時間がないんです』
もう膝から下は消えてしまった彼女が悔しそうにそう言いました。
冷静になれ、と考える頭は、それと相対して皮肉にも焦ってから回っています。
人魚姫の話を思い返しても、結局は泡になって消えてしまったので、どうすれば彼女が助かるのかは分からずじまい。
彼女の体は、腿、腰、手…とどんどんと消えていきます。
私の焦る頭を煽るように、ただ海は心地よい音を奏で続けていました。
彼女が消えかけている、ということは、きっとこの物語の連鎖ももう終わりだということ。
彼女が消えたら、きっと私は帰れるのでしょう。
けれど、本当にそれでいいのか?
彼女はどうする?
消えかけている彼女を救う手立ては、私にあるのでしょうか。
ついに、彼女の残っている体全体が光りだしました。
あと数分もしないうちに彼女は消えてしまう。
『……来て欲しくなかった…………』
悲しそうに俯いた彼女は、自分の消えてしまった手を見つめていました。
___嫌だ。
消えないで。
まだ私は貴女に伝えてない事が沢山あるんですから。
やめて。
『でも………来てくれて嬉しかった』
そういって諦めたように笑いました。
静かに閉じられた目からは、涙が溢れて。
私は彼女に触れようと、必死になって手を伸ばしました。
けれどその手は何も掴めずに空を切りました。
彼女が遺した1粒の涙だけがそこにあった。
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作者名:魚 | 作成日時:2020年2月16日 18時