総統閣下と氷の女【gr】 (ページ11)

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emside

水不足についての意見書を出すために、私は総統室に急いだ。

em「グルッペンさん。エーミールです」

gr「入れ」

失礼しますとお辞儀をして入って、1番に目を入ってきたものに目を剥く。

いや、当たり前でしょう？

グルッペンさんの膝の上に知らない少女が座ってるんだから。

em「え…と…………どなたですか…」

gr「俺のGeliebter(愛する人)」

………馬鹿なんですかねこの人。

とにかく書類を出してしまおうと近づいたところで、私はまた瞠目する。

だって………彼女の腕が凍っているんだから。

思わず凝視して、言葉が零れた。

em「それ………ニュニホプラントですか？」

『えと……すまん、分からないな』

困ったように彼女が眉を寄せる。

『これは…村に必ず1人産まれる忌み子だ。忌み子が産まれると、村が氷で覆われるからな』

自嘲したように腕を撫でる彼女の頭を、グルッペンさんが撫でて微笑んだ。

em「村に伝承などはありますか？」

『あるにはあるが………』

em「1度伺っても？」

まぁ、1度くらいなら…と呟いて、彼女が目を閉じて伝承の句をそらんじた。

『氷の女冷たい肌で誘うは天国なりや地獄なりや』

彼女がそう唱えると、パキンっと音がして、彼女の右腕が爆ぜた。

氷の腕にヒビが入ったのだとわかって、グルッペンさんが慌てている。

gr「な…大丈夫か…？それ」

『ああ…大丈夫だよ。時々同じようになるから』

確かあれは…腕の氷が割れたらその人も死ぬんじゃなかったか…？

私の村にも同じ句があるけれど、その人が早く死んでしまって、加護がなくなるから、っていう理由で無闇に言ってはいけなかったはずだ。

1度でいいから聞かせろ、と言われても絶対言ってはいけなかったんだ。

…でも彼女はサラッと言った。

…………どういう事だ…？

句以外、知っている伝承と違う…

彼女が話していた事も、彼女の態度も…

…これは詳しく調べなくてはならないかもしれない。

私はグルッペンさん達の前から辞した。

提出しなければならない書類の存在など忘れ去って。