とある科学の人造少女【とある】【上条当麻】 (ページ9)

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七話「とある少女の極限動揺」ページ9

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　少女は平坦な声で少年に告げた。実際、少女は本気でそう信じている。自分は死ぬべきであるし、街を救うには自分が死ぬしか無いと、本気で思っている。
　たかだか通りすがりの人間に止められたところで、その覚悟は揺らがない。揺らぐはずがない。少女はそうであると心から信じて、今まで生きてきたのだから。
「ちげえよ」
「……どういうこと」
　少女は少年を鋭く睨め付けた。漆黒の瞳が、縫い針のように鋭く少年を射抜く。しかし、少年は焦りすらせず、断言した。
「お前がなんで自分が犠牲になる前提で話してるんだ、って事だよ」
「なんで、って。何度も言わせないで。わたしが―――ッあ、あぶない！」
　少女は突然に、機敏な動作で少年の背中を目一杯の力で押した。

　その瞬間、少女の両足が切り落とされて、少女の足首から赤い液体が溢れ出した。

　まるでホールケーキを切り分けるように、伸びた髪をを切り取るように、あっさりと切り落とされた。だが、少女は顔色ひとつ変えなかった。痛みは感じなかった。おもちゃの武器のように、傷の規模と少女の反応はちぐはぐだった。

「ふむ、やはりこれでは動揺を誘うのは難しいようです」

　冷涼な声が、少年と少女の耳に届いた。少年は眉をひそめ、少女は目を皿のように見開いて、声のした方を向いた。
　少女は、自分の歯がガチガチと震える音を聞いた。心臓に、ドライアイスを押し当てられたような悪寒が走った。今聞こえた声は、自分とどこからどこまでもが似通っている気がした。
　白髪混じりの漆黒の髪を襟足の辺りでひとつ結びにし、漆黒の瞳の片方を包帯で隠し、全身には電極とケーブルが巻きつき、白のシャツと紺のブレザー、スカートを身に纏った小柄な少女。

「はじめまして。私(わたくし)、人造少女(ダミーガール)109号、水口日九(ひきゅう)と申します」

　少女の額を、冷や汗が伝った。
「物は相談なのですが、そこにいる108号を渡していただけませんかね。こちらも被害は増やしたくないのでなるべく協力していただけたらありがたいのですが」
　ついさっきまでは微動だにしなかった少女の足が、ガタガタと震えていた。背筋が凍った。自分の努力の全てを笑われたような、そんな気分になった。

「あぅ、ぁ」

　赤子のような声にならない声が、少女の口からぽとりと零れ落ちた。