五話「とある少女は詰め寄った」 ページ7
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上条当麻は走っていた。
強く握りしめた拳に汗が溜まる。忙しなく地面を踏み込む足には、地面とぶつかる衝撃がじわじわと蓄積されていく。ゼエハアと息を切らしながら、上条はあちこちへと目を走らせた。
―――ちくしょう、何処に居やがるってんだ……!
上条は歯を食い縛る。ついさっき、上条は自身の能力
立ち止まり、膝に手を当て息を吸う。顔を動かせる限り動かして三六〇度目を働かせているのに、襲撃者は影も形も掴めない。
前を見て、後ろを見て、左を見て、右を見た。そして上条は、気づいた。大通りを歩く雑多で平凡な人々に紛れた、異様な人物に。
それは、長く、黒く、白髪混じりの髪だった。
それは、血がべっとりと付いた、手術衣のような服だった。
それは、見覚えのあるふらふらとした足取りだった。
―――あいつ……ッ!
上条は地面を蹴って彼女の元に走り出した。
人の波を掻き分け、彼女の元へ一直線に進んだ。
* * *
少女は、自分に近づいてくる一人の少年の姿に気づいた。病院で会った、あのツンツン頭の少年である。
―――こっちに一直線に進んでいる⁉わたしの洗脳をかんぱしたって言うの?この短時間で⁉…まずは距離をとって視界から消える!『
少女は懐からおもむろに電卓を取り出し、その細い指で滑らかに打鍵する。
すると、彼女の掌から紅蓮の焔が出現した。少女は手を使って虚空に円を描くと、前方に炎の壁が出来上がった。轟!と炎が酸素を吸い込む音がした。
そして彼女は、5秒の時間差で姿をくらました。それでもツンツン頭の少年は、キッと少女の方を確実に睨め付ける。そして、右手で炎の壁を裏拳気味に跳ねた。
すると、ボンッ!とクッションを叩いたような音がなり、炎の壁が消え失せた。
―――炎を消した⁉まさかこの人……超能力をむこうかするの⁉……つごうがいい。このひとならわたしを殺してくれる!
行動は速かった。少女は電卓を打鍵すると即座に能力を解除し、ツンツン頭の少年の元へ突っ込んで行き、芯の通った声で囁いた。
「あなたにお願いがある。
―――わたしを、ころして」
か細い指でシャツの裾をつままれた少年は、目を白黒させてフリーズした。
ラッキーカラー
あずきいろ
今日のあなたにぴったりな能力は?
透視能力(クレアボイアンス)です!テスト解答もあの子の下着も透け透けだ!
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作者名:天洲秋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2020年7月18日 17時