とある科学の人造少女【とある】【上条当麻】 (ページ6)

今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:2,156 hit

四話「とある少年の幻想殺し」ページ6

・
　第七学区。
　大通りの人の往来の中に、一際目立つ少女がいた。
　長く、黒く、ボサボサで、白髪混じりの髪の毛。袖や襟や裾に血がべっとりついた手術衣。裾から伸びる数多のコード。右目から頭全体に巻かれている、血の滲んだ包帯。おでこに付いている電極。右耳から左耳までを貫く黒いコード。頭に付いている黒いバンド。そこから伸びる数本ものコード。ふらふらと安定しない足取り。
　全く周りにとけ込まず、浮いている容姿を持っているにも関わらず、周囲の人々は彼女に気づいていないかのような態度をとっている。
　―――こんなに、洗脳能力(マリオッテ)が効くなんて、おもわなかった。
　少女は口角をぴくぴくと上げる。よくよく見ないとわからないような変化だが、その顔は紛れもなく笑みを浮かべていた。
　―――でも、ここまで逃げれば研究所のやつらはおってくる事はない。それに、わたしをころしてくれる人が現れるかもしれない。これで、この街はこわれない。研究者のいっていた“まどのないびる”が何かはわからないけど、だいじなものに違いない。壊すことなんて、できるはずない。まどのないびるも。学園都市だって……。
　少女はギリ、と歯を食い縛った。
　思い出すのは、あの研究所で仄かに聞こえた、研究者達の会話の一節。
『これさえ有れば、窓の無いビルを焼き払うのも、学園都市を壊滅させるのも容易いだろう！我々は…』
　そこに、誰かのために存在する物を。この、憎くも愛すべき街を。壊せるはずがなかった。
　そして、彼女は他人のために、自分の危険を、傷を、痛みを、考えることができない。だから彼女は、自分の存在が消えればこの街は壊れずに済むと考えてしまった。
　それが、大きな間違いだとも知らずに。

　＊＊＊

　上条当麻は、買い物袋を手に持っていつもの(・・・・)街の往来を歩いていた。やっと済んだ買い物の帰り道だった。
　学生寮に帰ったら常時腹ペコ純白シスターインデックスが凶暴化して上条に飛びかかってきたりするんだろうかうわー不幸だ…なんてバカかアホみたいな思考を回して、上条は右手で(・・・)頭を掻いた。

　突然、バギン！と何かが割れたような音がした。

　上条は、咄嗟に自身の右手に宿っている力を思い出していた。
　幻想殺し(イマジンブレイカー)。
　それが異能の力ならば、魔術でも超能力でも神の奇跡(システム)だろうと無効化する必殺の右手。
　つまりそれは、上条が異能の力にたった今までかかっていたことを意味していた。