とある科学の人造少女【とある】【上条当麻】 (ページ5)

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行間「とある学区の研究所」ページ5

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　第一〇学区。
　学園都市で最も土地の値段が安いこの学区には、多くの研究所がある。
　そして、そんな第一〇学区の中でも第七学区寄りの一角に、特に古さびたコンクリートの建物があった。

　水口能力開発研究所。

　能力開発の更なる進化と発展を目標に掲げるこの研究所では、現在一大プロジェクトが行われていた。

「多重能力兵器化(スキルミリタリー)計画」

　そう名付けられたそのプロジェクトは、理論上不可能とされた多重能力者(デュアルスキル)を生み出し兵器化するというものであり、成功すれば数多ある研究所の中から突出した実力と膨大な額の予算を得ることができる、と研究所内は大騒ぎしていた。
　加えて、なにかと対立していた「量産型能力者(レディオノイズ)計画」が頓挫したことにより、所内の空気は完全に浮かれモードだった。

　しかし、つい最近になって研究所の空気は一変した。

　計画の被験体であり貴重な成功例である、人造少女(ダミーガール)108号が脱走したのだ。

　水口能力研究所の編み出した多重能力者(デュアルスキル)の実現法は、研究所に数多ある能力者の脳を総括するホストコンピュータである108号がいなければ不可能なものだ。
　それは、実験の凍結、あるいは中止を意味していた。
　これまでの成果が全ておじゃんになる危機を迎え、所属する研究員は大混乱に陥った。
　所長の水口氏は外部顧問を迎え、対策を仰いだ。
　研究所にやってきた外部顧問は全く平然とした顔で、

「なら、109号を作ればいいじゃないか」

　と助言した。
　そこからの対応は矢のように早かった。
　研究所に元からあるクローニング技術を総動員させ、108号と全く同じ、109号の少女を作ったのだ。

　狂ったように笑い始めた研究員が居た。

　109号を病的に可愛がった研究員が居た。

　突然実家に電話をかけた研究者が居た。

　皆が口を揃えて言った。

「これで私たち/僕たちは認められるんだ」と。

「なんで今まで気づかなかったんだろうか」と。

　―――暴走研究は、一向に止まらない。