とある科学の人造少女【とある】【上条当麻】 (ページ3)

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二話「とある少女のお目覚めは」ページ3

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　上条の手によって一命をとりとめた少女は、意識が戻ってきていた。
　最後に覚えた感触はコンクリートの硬い感触だったが、今はふかふかと柔らかく滑らかな布の感触だった。
「あ、れ……？」
　―――なんで、生きてる？
　少女は瞼をゆっくりと開く。天井から差し込む蛍光灯の光が、一瞬少女の目を刺す。
　自分が寝ているのだ、と気付くのに、数秒かかった。バサッ！と掛け布団を捲りあげ、少女が上体を起こす。
「……病院？」
　少女が周囲を見回すと、生体情報(バイタル)を示す機械がベッド脇に置いてあって、体の至る所にコードがくっついていた。
「……ッ！」
　少女はベッドから飛び降りた。体に巻き付いていたコードがブチブチ切とれる音が鳴る。
　部屋の窓の方へ歩いて行き、急いで窓を開けた。
「四階、か」
　下の方を覗き込み、少女は、

　窓の縁に足をかけた。

「わたしは、ニセモノでバケモノなんだから、早くしんじゃった方が……良い」
　少女の薄い唇がか細く言葉を紡ぎ、ゆっくりと瞼を閉じた。そして―――

「何やってんだ」

　少女の耳に、後ろから誰かの言葉が届いた。
　振り返って声の主を見る少女。白髪混じりの長い黒髪が、風に揺れた。
「なにって、なにが」
「今、お前が何しようとしてたか聞いてんだ」
　少女の怪訝な声に、真っ直ぐに答える、声の主。
　ツンツンした髪型が特徴的な青年―――上条当麻だ。
「見れば、わかるでしょう？……しのうと、して」
「そんなの見りゃわかる。……なんで、そんな事」
「なんで、って言っても。わたしが、ニセモノでバケモノだから。昨日、しねなかったから。それだけ」
「バケモノって、どういう……？」
　しびれを切らしたように、少女は窓の向こうへ体重をかける。
「おい、ちょっと！」
「……それじゃあ」
　少女は、あっけなく窓の向こうへ落下した。ここは病院の四階、実に高度は15mほどであり、普通の人間であれば重傷、あるいは死亡もあり得る。
　普通の人間(・・・・・)であれば。
　結局のところ、少女は生きていた。
「……やっぱり、生きてる。なんでしねないの？」
　ほとんど無傷の手を握っては広げるのを、少女は数回繰り返す。

「わたしが、バケモノだから」

　ぽつりと、少女は呟く。光の宿らぬ目が細められた。その目はどこか、世を達観したような雰囲気があった。
　―――自分でしねないなら……ころしてもらえば。
　少女はスタッと立ち上がる。そして、どこへ目指すともなく、歩き始める。

　それはただ、殺して貰う為に。
　呪われた、この自分を。