とある科学の人造少女【とある】【上条当麻】 (ページ11)

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九話「とある少女の生存否定」ページ11

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　焼けるような痛みが走っていた。
　血が沸騰しているかのように、体の内側が煮える。しかし少女は、その整った顔をピクリとも動かさない。少女は自分が傷つくことなんてどうでもよかった。
　人によって作られた人形風情が、ちっぽけで、無価値な命にしがみつくことなんて許されない。少女は心からそう考えている。自分は人間じゃない。ニセモノのニンゲン。誰にも心配なんてされない。自分の命に価値なんてない。機械人形だから。作り物の、人造少女(ダミーガール)だから。そんな思考が少女の脳内を支配している。
　―――だからこそ。
　少年が日九の前に立ち塞がったその瞬間、少女の体は硬直した。

　―――かれは、なにをやっているの？

　咄嗟に浮かんだのは疑問だった。彼は何のために立ち上がった？何がしたいんだ？少女を助けるためか？守るためか？そんなわけがない、と少女は即座に否定する。人形を命を掛けて守りたい人間など居る筈がない。ならばなぜ少年は日九に立ち向かう？何も見なかったフリさえすれば命は助かるのだ。少女一人が傷つくだけで済むのだ。なのに、なぜ。
「無謀ですねえ。そこらを歩いている学生風情が私に勝てるとでも？笑わせます。私も多重能力者(デュアルスキル)なのですよ？そこの108号に比べれば私のスペックは劣りますが、それでも10個程度ならば操ることができます。加えて私は物理兵器も使用する。あなたに勝ち目はほとんどありません。それでもあなたは無価値な人形風情のために戦うのですか？」
　少女の前に立つ少年に向かって日九がやれやれといった風に吐き捨てた瞬間に、少年は反論した。
「ちげえよ」
「違う？なにがですか？私に勝てるとでもいうのですか？それとも、そこの人形に価値があるとでも言いたいんですか？馬鹿馬鹿しい」

「勝てる勝てないなんていう問題じゃねえんだよ。俺はテメェのことも、あいつのこともなんも知らない。テメェが強いとか強くないとか、あいつに価値があるとかないとか、そんなのもどうでもいい。そこで辛い思いをしてる人が居て、泣き出したっていい筈なのに堪えて、我慢して、そんな人を目の前にして、勝ち負けだなんだなんて関係ないんだよ！そこで苦しんでいる人のために立ち上がるのに、理由なんていらねえんだよ！」

　少年は力強い声で言い放った。
　その言葉に呼応するように、少女は指先をぴくんと動かした。なぜかその言葉は少女の胸に強く響いた。今まで感じたことのないほど、温かい言葉をかけられた気がした。