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一章「科学の少女は出会う―――Encounting between a science girl and a science boy」 ページ2


 朝がやって来た。

 雲ひとつない青空から、燦々と日光が照りつける。そんな朝に、上条当麻は外に居た。
 夏も終盤に差し掛かっているくせに気温に容赦をしない太陽に恨み言を言いつつ、上条は食料を求めて買い物へ出ていた。家にある食料はほとんど、居候の純白シスターことインデックスが食い尽くしたのだ。
「あー……あちい」
 日光を避けるように日陰を選んで、上条は歩く。全くなんでこんな日に限ってコンビ二にもスーパーにも食品が入荷前なのか。店員さんに聞いてみたところ、第七学区に突如出現した途切れ途切れの血痕の調査のため、通行止めだらけで仕入れのトラックがなかなか来ないらしい。
「不幸だ……」
 上条はぐったりと言う。この不幸体質は昔からなのかもしれないが、上条には分らない。彼は記憶喪失なのだ。
 今朝は朝飯抜きかぁ、とため息を吐く。インデックスの朝飯どーすっかなーなんてことを考えながらふらふら歩く上条だったが、学生寮近くの路地裏の入口でふと足を止めた。
『何が』が引っかかる。
 ―――別に日陰だしちょっと入ってくかな。
 上条は路地裏へ歩んでいく。自分自身の足音が反射して上条の耳に聞こえる。やけに静かだな、と上条は疑問に思いながらも、歩みは止めない。
 路地の突き当たりは行き止まりだった。周囲の建物が高いので奥のところは暗くて見えないが、近寄って覗くと何かモノの輪郭が見えた。

 それは、倒れた人の体の輪郭(・・・・・・・・・)だった。

「……ッ!」

 上条は倒れた人の方へ歩み寄る。地面に着地させた足に異物感を覚えたが、そんな些細な事は気にしなかった。
 上条は倒れている人を見やる。艶など皆無の黒い髪の毛は長くぼさぼさで白髪混じりだった。服装はまるで手術衣のようで、至るところが血だらけだ。
 倒れている人を、上条は抱き上げる。体は柔らかい感触で、少女だろうか?全身が脱力していて、まるで死体のようだったが、鼓動と呼吸は止まっていなかった。
 一安心した上条の意識は、足に覚えた異物感へと移る。その時は気にも留めなかったが、よくよく見てみるとそれは、凝固した血液だった。
「こりゃ、どうなってんだ……?」
 ぐったりとしている少女、周囲へ広がる凝固した血液。
 上条の頭を、一閃の嫌な予感が駆け巡る。
 上条は脱力したかなり重い少女を負ぶって、近くの病院へ走った。時々転びそうになったが、上条は走り続けた。

 ―――とても長い時間が経った気がした。
 上条はやっと、病院へと辿り着いた。

二話「とある少女のお目覚めは」→←序文「とある少女の疑問」


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作者名:天洲秋 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/  
作成日時:2020年7月18日 17時

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