ヒーローたるもの 照輝 ページ8
「たったひとつの世界の英雄にすらなれない子供‥‥か」
右手の中に握ったピコピコハンマーをくるくると回しながら、照輝は目を伏せる。常に前向き思考の照輝といえど、現実を知らないわけではない。
英雄。救世主。その肩書は背負うにはあまりにも大きすぎて、軽々しく口にしていいものではないと誰もが言う。
「ええ。私は全世界の女神だからよく知ってるの。英雄はあなた程度じゃなれないわ。第一、たかが人の子が英雄になるなんて無理なのよ。彼らは時として神に反逆し蟻のように潰される。‥‥全世界の女神としては、実に残念なことにね」
言葉にあるのは
それを黙って聞いていた照輝は、ピコピコハンマーを回すのをはたと止める。そして面を上げ、上空に浮かぶ舞依に視線を合わせた。
「僕の
「へえ、なにかしら?」
その顔には、あろうことか笑みが浮かんでいる。照輝は、戦闘の前口上としては完璧な活舌と発声で更に言葉を紡いだ。
「僕がなるのは、ヒーローだ。間違っても英雄や救世主じゃない」
「‥‥何が違うの、それ?」
怪訝な顔をする舞依に、そんなことも知らないのかとでも言いたげに歯を出して笑ってみせ、照輝は息を吐く。それは溜息か、はたまた自らを鼓舞するものか。
「ヒーローはカンペキじゃない。英雄と違って弱いところもあるかもしれない。救世主と違って脆いところもあるかもしれない。‥‥でも、それでもだ」
「それでも?」
「ヒーローは最後にはゼッタイ勝って、ゼッタイみんなを助けるんだ。例え貶められ、闇に落ちても。例え打ちのめされ、希望を失っても。勝たないなんてありえない。助けないなんてありえない。―――それがヒーローなんだぞ」
照輝はピコピコハンマーを大きく振りかぶって跳躍する。いったいどんなギャグかと突っ込みたくなるほどに―――具体的には10メートル上昇した照輝は、舞依に接近すると、その額にめがけて振り下ろした。
―――刹那、衝撃波にも等しい暴風が吹き抜ける。
吹きすさぶ風の中で、舞依は余裕の笑みを浮かべてピコピコハンマーを受け止めていた。
「だから、なあに?私に勝てると?」
「勝てる勝てないの問題じゃないんだぞ―――」
照輝はピコピコハンマーを握る舞依の手を振り払って後退すると、太陽のような笑顔で言い放つ。
「僕はお前に勝つ!それがヒーローなんだぞ!」
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フウ(プロフ) - 29巻作成しました!こちらからお願いします!(https://uranai.nosv.org/u.php/novel/kazami133513/) (3月2日 22時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 続編移行致します!! (3月2日 21時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
雨咲(プロフ) - 更新しました! (3月2日 21時) (レス) id: daf5c838c6 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲(プロフ) - 更新します! (3月2日 20時) (レス) id: daf5c838c6 (このIDを非表示/違反報告)
愛宮リリー(プロフ) - 更新しました! (3月2日 17時) (レス) id: 234445217d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サナティ x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/
作成日時:2023年11月14日 22時