【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ47)

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これでおしまい　照輝ページ47

照輝が導き出した答えは「舞依の弾幕を耐えながら接近して叩く」だった。逃げることができないのならば、いっそ逃げなければいい。対抗することができないのならば、いっそ対抗しなければいい。弾幕をひたすらに耐え続けて本人を直接叩きに行く。それが勝利の未来を切り開くはずだ、と。
照輝は躊躇う素振りすら見せず、弾幕渦巻く嵐の只中へと飛び込んでいった。もはや壁と化しているそれに衝突する―――同時、全身に走り抜ける激痛。
苦痛に顔を歪める。流石は世界を燃料として打ち出す弾幕というべきか、一発が当たっただけでも身が引き裂けそうなほどに威力が高い。それが積層すること幾千。照輝が受ける苦痛は計り知れない。

「―――みんなの！」

痛みでぼやけそうになる意識を叩き起こさんばかりに、照輝は更に声を枯らす。歯を食いしばって一心に耐え、まだ前に進むことは止めない。
それはとても人間業ではなかった。ヒーローを志すというだけでこんな無茶苦茶ができるものか、と女神は驚き呆れて、呆然とする。
これが日彩木照輝。神に―――否、それとも違うかもしれない何かに熱烈に愛された少年。因果の特異点とでも呼ぶべき、僥倖と果報に祝福されたもの。
人間が喰らえばただでは済まない深手を何度も負いながら、照輝はひたすら前に進んでいた。無限にあるように思えた距離も、残るはあと三メートルばかりを残すのみ。
照輝は前進することに全神経を集中させる。
一歩。二歩。三歩。どこを踏んで進んでいるのかもわからないけれど、照輝は進んだ。
全能の女神はすぐ目の前。
視線が交差する。
言葉にならない言葉が交わされる。
そして、この期に及んで信じられないことに―――幸運にも(・・・・)足は止まらなかったし、幸運にも(・・・・)ピコピコハンマーを持つ右手はまだ動いていた。
照輝は何かを確信して、ピコピコハンマーを構えて、それから。

「―――ヒーローだぁぁぁ‼‼」

全身全霊を以て、ピコピコハンマーを振り下ろす。
目と鼻の先、その真正面に捉えた夢魅埜舞依の額のど真ん中に、真っ直ぐに。
ピコピコハンマーが接触するまでの刹那にも満たないほんの僅かな間が、永遠にも思えるほど延展する。
そして。
そして。
そして。

―――ぴこん。

あまりにも呆気なくて、軽くて、幼稚な音。
全知全能、全世界を統べる女神を打ち倒したのは、そんな玩具(おもちゃ)のような一撃だった。