【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ46)

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けれど進んで　照輝ページ46

まるで、三つ渡された選択肢の紙の全てに「負ける」と書かれているかのような。
まるで、ゲームのコマンドに「たたかう」も「にげる」も存在しないかのような。

全てを諦めるしか無くなる、究極の手遅れ。それが今だった。
生物のようにうねる弾幕の中で、舞依が微笑んでいた。まるで「ほら、言ったでしょう？」とでも言いたげに、嘲笑混じりの笑みだった。
さもありなん、というやつだった。誰だってこんなものに立ち向かいたくなどない。これを引き出してしまったことをただ絶望するだけしかできない。
―――それでも。
照輝の瞳はそれでも、真っ直ぐに目の前の敵を捉えていた。絶望も、呆然も、そこには無い。「負ける」という選択肢しか無くたって、「たたかう」も「にげる」も無くたって、それすらひっくり返して勝つ―――それが、ヒーローという生き方(・・・・・・・・・・)だから。

―――頭を回転させろ。思考停止するな。この状況を打開する方法を絶対に見つけ出すんだ。
―――だって、僕は。

『あんた、この前の異変の時言ったんでしょう？次の異変では自分がヒーローだって』

―――ヒーローなんだから‼

ヒーローは本質的に孤独な生き物だ。弱音なんて吐けない。負ける姿なんて見せられない。誰かに頼るなんてもっての外。
なのに、それなのに、なぜヒーローは敵(ヴィラン)に立ち向かえるのか？
それは、自分のことをヒーローとして認め、頼り、背中を預けた人々を、その笑顔を守りたいからだ。
そのためならばどんな逆境にも耐えられる―――否、耐えてみせる！

瞬間、照輝の脳裏でパチンとスイッチが入る音がした。

どうやってこの逆境を打ち破るのか。その方法が、認識の隅にふいと現れた。
気付いてしまえば、それはあまりに簡単な話。
戦うことも逃げることもできない、ならば―――！

「―――僕は！」

覚悟を決めたことを世界中に叫ぶかのように、照輝は声を張り上げる。対して舞依は、それを待ち構えていたと言わんばかりに微笑んだ。人差し指をすいと動かすと、照輝を取り囲む弾幕の嵐が一斉に加速を始める。
弾幕のカタチをとった絶望が、照輝一人に群れを成して襲い掛かる。
そして照輝は、それを前にして―――

―――真っ直ぐに、全能の女神の元へと突き進んでいく。

さしもの舞依も、これには目を丸くした。当然ながら舞依と照輝の間にも幾千という弾幕が積層している。それが目に入っていないかのように前進する照輝は、つまるところ弾幕に自ら当たりに行っている(・・・・・・・・・・・)も同然なのだから。