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それは絶望で 照輝 ページ45

女神の嬌声が幻想の狭間に響き渡る。
瞬間、それまでとは比較にならないほどの強い圧が舞依の全身から噴き出した。藍白のワンピースドレスが風に舞い、纏わりついていた土埃が幾分か吹き飛ぶ。
―――これが、全世界を束ねる全知にして全能の女神。今の今まで、この怪物は実力を抑え込んでいた―――否、あるいはこれさえも本気ではないのか。

「創った物は、永遠には保てない‥‥それが例え、世界でも」

詠唱のような―――厳密にはそうではないのだろう、彼女にはそんなものすら要らないはずなのだから―――言葉が紡がれる。その声は歌うように優しく、憐憫と愛情が綯い交ぜになっていた。少なくとも、照輝の耳にはそう聞こえた。

「壊れたならば、使えばいい‥‥弾幕にして!」

そして、全知全能の女神は終焉を言祝ぐ。この世の誰よりも―――否、ありとあらゆる世界の誰よりも純真無垢な微笑みを、無邪気に浮かべながら。

「ラストワード、『創られる世界、壊れ行く世界』」

―――その、瞬間。

聴覚が意識から断絶した。
音声機器が不調を起こした時のあの不快な甲高い音と共に、世界から音が消える。聞こえるのは自分自身の荒い呼吸と、心臓が脈打つ音だけだ。
轟音の波が照輝の鼓膜を直撃した。凡そこの世に存在する語彙では擬音不可能な音が、一瞬にして右から左へと突き抜けた。そんな単純なことに気付くのにも、五秒余り必要だった。
鼓膜はあまりの轟音に破れたらしかった。激しい耳鳴りと出血を抑えるように左手で耳を塞ぎ、照輝は何が起こったのか理解しようと目を動かす。

その先にあったもの。
それは。

―――天を隙間なく埋め尽くす弾幕と、弾幕と、弾幕。

照輝は弾幕が織りなす台風の目の中に居た。どこに目を遣っても、どこに目を逸らしても、その先では魔法陣が照輝に向かって砲口を開いている。
億千万に億千万を掛けた、星の数よりも馬鹿げた数の弾幕。それが更に億千万。一つ一つ丹念に数えたとしたら、那由他だの阿僧祇だの一生で聞くか聞かないかという単位が飛び出してくる事だろう。ここが幻想の狭間という異空間の中でなければ、幻想郷を飛び越えて地球全体、どころか太陽にまで届くほど弾幕と魔法陣は積み重なっていた。
生物ならば一瞬もかからずに理解する―――こんなもの、避けるなんて不可能だと。
これは勝負になんてならない。スペルカードルールなんてものが幻想郷にはあるが、その枠の中にすら収まっていいものではない。蹂躙という言葉ですら生ぬるい。

けれど進んで 照輝→←そして幕切れの幕開け 照輝



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フウ(プロフ) - 29巻作成しました!こちらからお願いします!(https://uranai.nosv.org/u.php/novel/kazami133513/) (3月2日 22時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
フウ(プロフ) - 続編移行致します!! (3月2日 21時) (レス) id: b910a0dd1c (このIDを非表示/違反報告)
雨咲(プロフ) - 更新しました! (3月2日 21時) (レス) id: daf5c838c6 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲(プロフ) - 更新します! (3月2日 20時) (レス) id: daf5c838c6 (このIDを非表示/違反報告)
愛宮リリー(プロフ) - 更新しました! (3月2日 17時) (レス) id: 234445217d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サナティ x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/  
作成日時:2023年11月14日 22時

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