【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ43)

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疾風一閃　照輝ページ43

「随分と調子に乗ってるみたいだけれど‥‥」

吹き飛んだ舞依は着地をしてしゃがんだ状態からゆっくりと立ち上がる。その声はほんの僅かながら戦慄き、指先はミリ単位で震えていた。きっと照輝がよほど気に障ったのだろう。神が―――それも全世界に君臨する全知全能の女神が、ピコピコハンマー一本しか持ち合わせていない少年に一杯食わされたのだから。

「たかだか一回私を殴り飛ばしたところでねぇ―――」

続くピコピコハンマーの打撃を怒りに震える左手で捌き、

「逆転した、なんて思うんじゃないわよ―――人間ッ！」

お返しとばかりに照輝を十数メートル吹き飛ばして、唸るかの如き声と共に右手を掲げた。人間を圧し潰すために体を動かすなんて心底億劫だと言うかのように、一歩も動かずに。
瞬間、天に移動した照輝の視線の先―――億千万の色彩に彩られた穴が、花開く。

円。

楕。

線。

星。

それは言うなれば、弾幕で構成された小銀河。
この楽園にありとある弾幕のすべてを敷き詰めた万華鏡。
幼稚園児が描いたかのような彩の暴力が、空からゆっくりと墜ちる。

「幻符『全世界の幻想郷』。まだ、ラストワードなんて出してあげない―――出すもんですか。あなたは私が圧し潰すのよ‥‥ちっぽけな蟻のように！」

そう、これは前座に過ぎない。全能の女神は、本命の弾幕をまだ隠し持っている。
小銀河は、既に照輝の頭上五メートルに迫っていた。これがラストワードではないというだけで誰もが全てを諦めてしまう、絶望の具現が。
―――だが。
照輝もまた、一歩も動かなかった。頭上に迫る小銀河など見えていないかのように。あるいは、これをあしらうために体を動かすなんて心底億劫だと言うかのように。

頭上四メートル。

いまだに照輝は動かない。ただ顔を前に向けて、女神を睨みつけている。

頭上三メートル。

それでも照輝は動かない。なにをかんがえている、と口だけで言う女神を鼻で笑うかのように、顔すら動かさない。

頭上二メートル。

ようやく照輝は動きだす。戦闘中とは思えない緩慢な動作で、ピコピコハンマーを構えた右手を掲げる。

頭上一メートル。

そうして照輝は大笑した。呵々とばかりに声をあげ、口角を上げ、そして―――ピコピコハンマーを、全身全霊を以て振り下ろす！