【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ5)

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悪辣で合理的で　カイルページ5

「はあ、罪‥‥罪ねぇ」

抜き身の一条刀を肩に乗せて、カイルと相対した神樂は至極つまらなさそうに呟く。対してカイルは艶めく青紫の唇の前にか細い人差し指を立て、睦言にも似た吐息混じりの声を出した。

「ええ、罪です。人は愚かしく、醜く、罪深いもの。それを私が―――いや僕が、数え裁き罰を下して差し上げましょう。―――さあ、貴方の罪を告白しなさい」

職人が丹念に紡いだが如き細く長い睫毛が上下し、半月型の紅の瞳が妖しい光を帯びる。真白い空間の中でありながら、それは血の満月(ブラッドムーン)のように輝いた。
その異質な雰囲気に、神樂の額から一筋冷汗が流れる。しかしそれでも神樂は戦意喪失などしない。むしろやってやろうじゃないの、と口角を上げすらしてみせた。
それがカイルには、面倒くさくて仕方がない。さっさと勝手にやられてくれればよかったものを。

「罪なんてあるもんですか、こちとら曲がりなりにも巫女やってんのよ。巫女は常に穢れ無き身じゃないと話にならないの。あんたなんかに量れるような罪があったら、あんたより先にクソ神どもにクビにされてるわよ！」

一条刀の鈴がちりん、と鳴る。
―――それが、開戦の合図だった。

「―――審判の時です。スペルカード発動、重圧『罪の重さ』」

カイルが手の平を振り下ろすと、大量の魔法陣が神樂を囲む。弾幕が放たれるであろうことを予期した神樂が一条刀を振り抜こうとしたが、カイルが一歩早かった。
モノクロの弾幕はひとつひとつが細かい弾幕でありながら、群体を成してうねるように不規則に運動した。神樂はきっとそこに、攻撃の意思は感じられなかったに違いない。―――なぜなら、このスペルカードは攻撃などが目的ではないからだ。

「なるほど、なるほど‥‥これが貴方の犯した罪ですね(・・・・・・・・・・・・・)？」
「なっ―――どういうこと！？」

このスペルカードの真の目的。それは、相手の犯した罪の幻覚を映し出す(・・・・・・・・・・・・・・・)こと。すなわちこれは前段階なのだ。
弾幕を目にした神樂の瞳に、動揺と焦燥が浮かび上がる。それを見て、カイルは思わずにやりと嗤った。
勝負とはこういうものだ。なにも直接相手を倒す必要はない。圧倒する必要もない。ただひたすらに、相手が勝手に自滅するのを待てばいい。それが最も効率的で合理的だ。

―――それでは拝見しようではありませんか。彼女の罪を―――