【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ38)

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奇跡か必然か、あるいはⅡ　照輝ページ38

「え？なあに？」
「―――ジョーダンじゃないって、言ったんだぞ」

しゃがんだ状態からゆっくりと立ち上がり、照輝は幾度目かも知れない啖呵を切らんと口を開く。

「何度も言ったじゃないか。僕はヒーローになる‥‥いや、ヒーローなんだ。ヒーローのナンたるかが君はゼンゼンわかってない。助けに来てくれるかもしれない、だって？そんなのお断りなんだぞ。ヒーローは強くて、でも孤独で、なのにそれさえも自分の強さにするんだ。誰かを巻き込んで勝つなんて、ヒーローとは呼べないんだ」

言いながら、照輝の胸にはちくりと刺さるものがあった。ほんの少しだけ、表情が歪んでしまう。
だったらどうして今までの異変で神樂と共闘していたのか。本当にヒーローになりたいのならば、少なくとも戦うときは彼女とは共に居るべきではないのに。
そしてもう一つ‥‥照輝は、この瞬間ばかりは剣城や被華―――神樂以外に共闘した仲間たちの顔が浮かんでいなかった。自分の戦いに巻き込みたくない人として脳裏にあったのは彼女だけだった。なぜ彼女の顔ばかりが頭に過るのかが、ちっともわからない。
照輝は少しだけそれが見えないふりをするしかなかった。その矛盾を片付けるにはもう少し時間が必要だった。

「とにかく。僕はヒーローとして、僕だけで君をゼッタイに倒す。ゼッタイに、だ。だからもうこれ以上言葉を交わすつもりはないんだぞ。女神だとか人間だとか知らない。全能なんてどうでもいい。残るのは、僕が君を倒したというジジツだけだ！」

照輝がピコピコハンマーを構え、振り抜く―――その瞬間。
突然に不思議なことが起こった。
誰がどう言葉を尽くしても、それは不思議なこととしか形容できなかった。ただ結果を淡々と述べるならば、それは。

「これは一体、どういうことなのかしらね‥‥！」

舞依の鳩尾にピコピコハンマーがクリーンヒットし、十メートルほど先にまで吹き飛んでいた。
誰がいくら手を尽くそうと傷一つ付かなかったその白い肌に、わずかに擦り傷がついている。これには何よりも舞依が驚いていた。
奇跡、あるいは偉業。それとも必然か。照輝の人生に纏わりつく因果への干渉にも等しい豪運が、照輝の決意にやっと応えたのか。
答えがどれであろうとも、照輝にとってはどうだってよかった。
今この瞬間、照輝は勝機を見出した。ヒーローらしからぬ屈辱の時間はもう終わりだ。

「これからが、本当の―――ヒーローの出番だ！」