【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ26)

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最終ラウンド　カイルページ26

刀を構え直し突進してくる神樂。その顔は紅色に染まっていて、興奮状態なのは火を見るよりも明らかである。脳内ではさぞやアドレナリンやらがドバドバ出ているのだろう。
理性が吹っ飛んだ敵ほど面倒なものはない。カイルは根本的に理性的な人間であり、そういうバーサーカー的な思考回路は守備範囲外なのだ。二対一の状況で粘り続ければいずれ向こうが勝手に倒れてくれるかもしれないが、神樂は完全にカイルを狙いに来ている。二対一にした強みが生きていない。

―――これ以上戦闘をだらだらと引き延ばすのも非効率的‥‥早いとこ決着をつけてしまいますか。
「藍良さん、任せますよ」

アイコンタクトで藍良に指示を出す。とどめを刺すから、準備する時間を稼げ、と。

「はいはい了解。‥‥めんどくさー」

藍良は力の抜けた表情のまま了承し、跳躍して神樂に接近。そんなもの知ったことかと神樂は全身を続けようとするが―――何かに引っ張られて動作が停止した。重力に引かれながら何が起きたのかと見回している隙に、カイルはふわりと着地しスペルカードの準備を始める。
神樂の足首には包帯が巻き付いていた。周囲をふわふわと漂っている包帯に、接近した瞬間に神樂の足を巻き込んでおいたのだ。藍良は腕から垂れた包帯を見せつけるように手を挙げながら言う。

「邪魔はさせないよ。気が進まないけど、頼まれごとだからね」
「つまりあんたは、あのヒョロガリの言うことを聞かないといけない弱っちい奴ってこと？無効化だか防壁だかを使えるみたいだけど、大した事ないじゃない」
「言葉でしか強気に出れない巫女さんよりはマシじゃないかなぁ」

なにやらレスバトルが始まっているが、それはカイルの与り知るところではない。力が満ちていくのを感じながら、魔法陣を展開する。正直なところこれはカイルが意識して出しているものではなく能力を使おうとすると勝手に出てくるものなのだが、魔法陣の展開が能力の発動と同値なのだから展開するといっても問題はない。

「裁きを。神の右手(めて)が示すまま、ただひたすら現世に秩序を。罪深き者に、神罰と慈悲のあらんことを。―――神罰『偽りと真実の見極め』」

刹那、レーザーが空間を一閃する。カイルの大技が来たことを察した藍良は、興味なさげに撤退していった。

「ちょっとあんた、逃げてんじゃ―――」

言いかけたところに、弾幕が飛んでくる。神樂を檻に捕えるかのごとく、レーザーの照準を合わせる。
―――最終ラウンドの始まりだ。