【募集企画】東方幻想記録物語 28巻 (ページ23)

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天然で地雷を踏み抜いていくスタイル　栞ページ23

「‥‥はあ」

正体不明の電話の主を探して人里へやってきた道中、無駄に物騒な人探しに遭遇した栞の第一声はこうだった。この少女、可憐な容姿をして妙なことを口走る。

「いや、見てないと思うが。栞は見た記憶あるか？」
「いいえ。ないわ、兄さん。そんな特徴的な人物なんて忘れようがないもの」
「そうだな、それもそうだ。―――というわけだな」

鎬の返答に対して、使えん奴らめとでも言いたげに嘆息する少女。だがそれ以上に気になることがあるようで、すぐに言葉を切り返した。

「‥‥聞くに、お前達は兄妹なのか？」
「ああ。そうだ、自己紹介してなかったな。俺は四十里野鎬で、こっちが妹の栞だ。よろしくな」
「ご紹介に与った栞よ。よろしく」
「そうか。実は私が探しているのも兄なんだ。この私の兄さんというのが驚くほど―――いや、むしろ当然ながら―――美しく神々しく素晴らしい人間離れした御方でな。こうして探している今もどこかにいるはずの兄さんをひたすらに思い続けずには居られない‥‥はぁ、結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚―――」

一種の怨念とすら表現できそうなほど想いが詰まった独り言を呟く少女。名も知らない状態の彼女だが、かなり常識的にあり得ない人間なのはよくわかるというものである。だが、今の栞にはそれ以上に気になる―――あるいは、突っかかりたくなるフレーズがあった。

「‥‥あなた、今の発言の真意を聞いても良いかしら？」
「結婚結婚結婚結婚結婚結婚―――ぁ？何を言ってるの？私は兄さんを心から愛している。だから兄さんと結婚したい。‥‥たとえ、無理矢理にでも(・・・・・・・)」
「無理矢理(・・・・)‥‥ですって？失礼、一言言わせてもらうけれど」

その瞬間、栞の口から放たれたのは、少女―――ラターリヤ・アルロフスカヤに対して致命的に響く一言であった。それ即ち。

「―――それは、本当に愛しているとは言わない(・・・・・・・・・・・・・・)のではないのかしら？」