少女漫画じゃないんだから ページ5
身体はもう大丈夫なんですか。
その言葉の意味が理解出来ず目をパチパチと瞬いて、面積の半分以上タンスの中に仕舞っていたタオルを持つ手が止まった。
数秒の間が流れる。数日前の記憶を掘り起こしてようやく意図が分かった私はタオルを放し、慌てて両手を振った。
「ご、ごめんね！一瞬何のことかと思って。風邪ならもうとっくに治ってるよ」
多分と言いかけたそれを寸前で飲み込む。
「そうですか、良かったです」
彼の表情が僅かに和らいだ。少し気恥ずかしくなり、逃げるように顔を逸らして作業に戻る。
話題が出来たことに内心喜びながら、数日前の彼とのやり取りを思い出した。
「そういえば私が倒れそうになった時、ジェノス君支えてくれたよね？ ありがとう。まだお礼も言ってなかった」
「お礼なんていいですよ、当然のことをしたまでですから」
何てこともない表情でさらりと言う。そういうところが恐ろしいんだよなあ、と苦笑した私はその支えて貰った時の後のことを思い出した。
熱が酷く意識も朦朧としていた為、あまり具体的には記憶に残っていないが、あの時のことは余程のことがない限り忘れないだろう。
本人の許可なく突然、彼に横抱きされた時のことだ。
また手が止まると同時に、その時の感触や香りなどの妙に細かい記憶まで蘇る。顔が熱くなっていくのが分かった。
動きが止まった私に気付かないジェノス君は口を開く。
「…それと、申し訳ありませんでしたAさん」
「え、な、何のこと？」
「Aさんの言う通り、いくら早く安静にした方が良いと言っても軽々しく女性を抱き上げるのは───」
「わー！わーーー！ 更に思い出させないでぇ！」
頭をぶんぶん振り耳に手を当てる。恥ずかしさで爆発しそうだった。
「しかし、」
「き、気にしなくても良いよ！ 心配してくれたんだし！ うん！ わ、私の方こそ眠るまで付き合わさせちゃって──…あっ」
地雷を自ら踏んだ。
眠るまで手を握ってくれたジェノス君の姿を思い出し、熱湯のように顔が熱くなっていく。
何これ罰ゲーム？ 恥ずかしくて死にそうなんだけど。ジェノス君、貴方のそれは意地悪な心なんてない純度100％のものだろうけど私にとっては心臓に悪すぎる。
「Aさん!? 大丈夫ですか！ 急激に体温が上がって──」
「大丈夫！大丈夫だから！お願いだからあんまり顔見ないで！」
近寄るジェノス君を手で制した。
今、私が心の底から思っていることを言おう。
お兄ちゃん早く帰ってきて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 313人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩音 - お久しぶりです、ぷーぷーさん！夢主ちゃんがかなり危ない感じなのではよサイタマお兄ちゃん召喚ですよ！！ (2017年9月25日 20時) (
レス) id: dbaa959796 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ぷーぷーさん» コメント返信ありがとうございます！ ありがたく使わせていただきたいと思います！ これからも応援しています！ 無理なさらない程度に頑張ってくださいね！ (2017年9月8日 14時) (レス) id: bc202da462 (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - レイさん» どうぞ、私のオリキャラで良ければいくらでも。応援ありがとうございます。大変お待たせ致しました。これからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - Aさん» ありがとうございます。こんな作品でも貴方様の心を動かす事が出来たのなら、これほど嬉しいことはありません。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - 白錬(新)さん» ありがとうございます。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷーぷー | 作成日時：2015年11月2日 19時
