そう簡単に傷は癒えません ページ31
家に帰宅してから一時間が経った。空はもう暗い紺色に包まれている。膝を抱えお兄ちゃんの背中にもたれかかりながら薄い桃色の携帯を見つめている状態がただただ続くばかり。未だ決心がつかず、誰とも連絡を取っていない。ついには溜め息をするのも億劫になってきた頃、ふとジェノス君の私物が視界に入った。バングさんに支えられてぐったりとしていた彼はクセーノ博士に今頃メンテナンスを施されているのだろう。
問題なく会話は出来ていたが、それでも身体に不自由が出ている。本人は気にしなくても良いと発言していたが心配せざる終えない。後遺症などが残らなければ良いが。
「ジェノス君大丈夫かな」
「本人が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんじゃね」
「適当め」
「実際それしか言えねえだろ」
「だとしてもだよ。もっと心配してますよオーラ出してくれない?」
「変に心配し過ぎるとあいつも困っちまうだろ。つか、あんまりネガティヴな事考えてるとまた熱出るぞ。楽しい思い出やら何やら思い出しとけ」
「嫌な記憶しか思い出さない」
「…んだよ、爺さんの言葉気にしてんの?」
今まで漫画に没頭していた兄が唐突にそれを止めてこちらに身体ごと振り返る。彼の背中にもたれかかってた私は当然後ろに倒れかけたが、床に背が当たる前に兄に受け止められた。私は身体の向きを変えていない為お兄ちゃんに背を向けてる状態になっている。なんだか顔を合わせづらい。
それは彼の言葉が図星だったからなのか、ただ単に振り返る気力がないだけなのか疲れ切った頭では上手く判断出来ない。ので、私の起こした行動は膝に顔を埋めて沈黙を貫くことだった。そんな私の脳天に顎を乗っけて軽く体重を預けてくるお兄ちゃんだが、私は何も言わない。喋るのも疲れた気がする。
「あの爺さんはあいつらみたいな頭のおかしい人じゃねえだろ、多分。ジェノス助けてくれたんだし」
「………」
「なあ、A」
「…………」
「お前の気持ちは分からんでもないし、十何年前の奴以外でも進化のなんたらかんたらっていう変な集団の事もつい最近あったから仕方ねえよ」
「……………」
「あれ忘れろとかは言わねえけどさ」
「……………」
「もっと気楽になれよ。じゃねえと、」
「もう、もういい。わかったから。休ませて」
ほぼ突き飛ばすような形で兄から離れる。名前を呼ばれたが無視を決め込み、布団を敷き始める私。机に置いていた携帯を抱きしめるように持ってから逃げるように布団の中へと入った。
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詩音 - お久しぶりです、ぷーぷーさん!夢主ちゃんがかなり危ない感じなのではよサイタマお兄ちゃん召喚ですよ!! (2017年9月25日 20時) (レス) id: dbaa959796 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ぷーぷーさん» コメント返信ありがとうございます! ありがたく使わせていただきたいと思います! これからも応援しています! 無理なさらない程度に頑張ってくださいね! (2017年9月8日 14時) (レス) id: bc202da462 (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - レイさん» どうぞ、私のオリキャラで良ければいくらでも。応援ありがとうございます。大変お待たせ致しました。これからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - Aさん» ありがとうございます。こんな作品でも貴方様の心を動かす事が出来たのなら、これほど嬉しいことはありません。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - 白錬(新)さん» ありがとうございます。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぷーぷー | 作成日時:2015年11月2日 19時