所詮、全部お見通しなのだ ページ30
「なあ」
「はい」
「鍵と窓」
「…はい」
「何か言うことは？」
「申し訳ありませんでしたサイタマお兄様どうかこの馬鹿で憐れな妹をお許しください」
巨大隕石の二次災害をなんとか回避できた自身の住処であるボロアパートの錆びたドアノブを捻りながら無の表情で血も凍るような冷たい兄の声を聴けるのはこれで最後にしたい。やれやれ、と言った感じで目を伏せて溜め息を吐き、部屋の中へと入っていく。それに私も続いた。
内側から鍵を掛け、少し砂で汚れたシューズを脱ぎながら先程の兄とはまた違う溜め息をゆっくりと吐き出した。
あまり体を動かすのは得意ではない私があれだけ走ったのだ。筋肉痛は免れないかもしれない。明日はバイトがあると言うのに、大丈夫なんだろうか。そもそも店は無事なんだろうか。同じ所で働いている方々の身の安全を確認したいのが本心だが、今それを実行するのは些か難しい。もう少し休んでからにしよう。
ティッシュで砂を拭き取った後、重い足を引きずりながらリビングへと向かう。もうそこには普段着に着替えてのんびりとテレビを見ている兄の姿があった。あんな事が起こった直後でも変わらない彼に思わず苦笑していると、彼はテレビから視線を外しこちらに移す。
「足、大丈夫か？」
「どう、だろう。筋肉痛にはなるかもしれない」
「明日バイトあるんだろ。いけんのか？つか店大丈夫なのか？」
「そうなんだよねぇ。一応後で店長に電話してみるけど……、…」
「けど？」
「……」
「なんだよ」
「…別に」
兄の視線から逃れるように踵を返してキッチンへと足を進める。何の変哲もないシンプルな透明のコップを手に取り蛇口を捻った。水は問題なく出るようだ。半分ほど溜まった水を口元に運んでちびちびと飲みながら、先程言いかけた言葉の続きを思い出す。
電話はしてみるけど、もし何らかの悲報が知らされたら立ち直れないかもしれない。
例えば店が物理的に潰れたりだとか、店員の内の一人が大怪我、あるいは亡くなったとか、受け入れ難い現実を突きつけられそうで怖い、とつらつらと本音を語ってしまうところだった。別に兄に対して本音を言う事自体に抵抗は然程ないが、口にすることによって更に不安が膨れ上がるのは望んでいない。
(まあ、こんな事一々言わなくても全部お見通しなんだろうけどね)
兄に敵う者はいない。そんな基礎中の基礎を改めて実感した私は自虐じみた笑みを浮かべながら、ゆっくりとコップから口を離した。
そう簡単に傷は癒えません→←過去話 ※視点戻ります。また台詞がありません。
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詩音 - お久しぶりです、ぷーぷーさん！夢主ちゃんがかなり危ない感じなのではよサイタマお兄ちゃん召喚ですよ！！ (2017年9月25日 20時) (
レス) id: dbaa959796 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ぷーぷーさん» コメント返信ありがとうございます！ ありがたく使わせていただきたいと思います！ これからも応援しています！ 無理なさらない程度に頑張ってくださいね！ (2017年9月8日 14時) (レス) id: bc202da462 (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - レイさん» どうぞ、私のオリキャラで良ければいくらでも。応援ありがとうございます。大変お待たせ致しました。これからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - Aさん» ありがとうございます。こんな作品でも貴方様の心を動かす事が出来たのなら、これほど嬉しいことはありません。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
ぷーぷー - 白錬(新)さん» ありがとうございます。大変お待たせ致しました。どうかこれからもよろしくお願いします。 (2017年9月8日 3時) (レス) id: 656daaefee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぷーぷー | 作成日時：2015年11月2日 19時
