カタツバキの花を君にー3ー *K.I* (ページ10)

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｢…涼介…｣

白い壁に白いベッド。
独特の匂いが鼻を刺す。
…私がいい思い出がない場所。

｢ん、ごめんな｣

今朝方、慧くんのお弁当を作っていると
家の電話が鳴り響いた。

おじさんとおばさんは仕事。
お姉さんは一人暮らし。
妹さんは部活。

自分が出るしかない状況に少し戸惑いつつ
受話器に耳を傾けると。

＜山田涼介さんのご自宅でしょうか？いまさっき事故にあい○○病院に運ばれてきたのですが______＞

手の震えが止まらなかった。

また、まただ。

私の大切な人が。

慧くんのお弁当を持って家を飛び出した。
千景に急いで電話をしてお弁当を体育館の玄関口で渡すと急いで病院に向かった。

慧くんへの罪悪感が拭いきれぬまま
涼介が無事であることを祈りながら…。

｢怪我大したことなくてよかった…｣

｢うん、原付との衝突だしね。

____________だから、もう泣かないで？｣

涼介の大きな手が私の目元を拭う。

｢りょ、すけまでいなくなったら、私…｣

家族を失うことが怖い。

その一心だった。

｢俺にもAしかいない…。だから、どこにもいかないでよ。｣

前にも聞いたことあるようなセリフを囁かれ
ベッド脇に座っていた私を涼介は優しく抱きしめた。