おまけ ページ35
暫く乗っていると見えてきたのは
綺麗な夕日に照らされた海だった。
「わぁ、綺麗…」
「でしょ、次で降りるよ」
聞いたこともない駅名の駅で降りて
2人で並んで海に向かって歩き出す。
久しぶりに見る海は綺麗で潮風が心地よかった。
「…みんなに会いたくなるなあ」
思えば、嫌な思い出もできたし、泣いたりもしたけど
なんだかんだ言ってみんなで過ごせた夏はとてもいいものだった。
現にみんなのおかげで前に進めている。
「僕らは毎年あそこでバイトしてるから来ればいいよ、また。」
もうやりたくないけどー。なんて言いながら楽しそうな知念くん。
夏とか海とか、暑苦しいものは少し苦手だったけれど彼と過ごすなら悪くない
そんなことを思えてしまうほど知念くんに溺れていた。
「ここ、初めてAのとこ抱きしめた場所に少し似てる」
指さした方を見ると少し入り組んだ岩陰だった。
「僕が初めてじゃないのが腹立つけど、あそこはキスしたところに似てるね」
海から市街地へと続くちょっとした道路みたいな場所。
「なんで海に？」
「え？だめだった？」
「ううん！急になんでだろって思って…」
ふと疑問に思ったことを口に出すと知念くんは私を見ながら楽しそうに答えた。
「もう一度、しっかり焼き付けておきたかったから。Aとの海。」
「私との海…？」
私と海だなんて海の家で沢山見ただろうに。
「暗闇の中、泣いてたり、涼介に邪魔されたり、みんなと一緒に見たり。海なんてろくに目もくれずキスしたり…思えば、Aと二人では眺めてないなって。」
知念くんがサラッと言った言葉に体温が急上昇する。
こんなキャラだっけなんて思ってると知念くんも耳まで真っ赤で目を合わせてくれなかった。
堪えきれずに思わず吹き出すと、なに。なんて可愛く睨まれてしまった。
「ふふ、かわいい」
「はぁ？」
身長は同じくらいのはずなのに
彼はいつも少し大きく見えた。
「キスだけで何赤くなってんの。」
小悪魔な彼。
「……れもんのあじ。」
「ふっ。なにそれ、ファーストキス？」
「ううん、知念くんとの恋はレモン味」
「すっぱ。褒められてんの？」
甘酸っぱーい恋も、2人で沢山砂糖を入れて
「知念くん、だいすき」
「……僕もAがだいすき。」
あまあまな恋にしてしまおう。
終
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作者名：にゃむ | 作成日時：2019年1月15日 22時
