自.傷.少.女【歌い手】

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スマホの音がやまない。


Twitterを開いてみる。

動画リンクを貼った私のツイートを確認する。


いいねやリツイート。このツイートがずば抜けて多い。


変わった。


珍しい。


何があったリストカッター。


こんなコメントが多かった。



記憶を取り戻すまで、もっと元気の出る曲を歌いたいという気持ちが湧き上がる。

でも、明るい曲は探すのに困難だった。

だって検索履歴が暗いの一言で表せるほど、その言葉で埋まってた。


ここまで暗い曲好きだったとは。




カチカチ


カチカチ


クリック音が部屋に響く。

あまりにも歌のことを忘れていて、どんな曲が歌いやすいのか。

よくわからなくなってしまった。


……息抜きしよう。


牛乳をある程度あっためて角砂糖を6、7個入れる。
このくらい甘い方が、私は気に入っている。

ホットミルク片手にもう１回パソコンの前に座る。

口に広がる甘みは私を落ち着かせてくれる。




ヘッドホンから機械音声が流れてくる。


あぁ、この曲がいいかな。

解釈ページたるものがあるらしいのでそれをざっと見てみる。

これに自己解釈を付け足す。


優しく、歌えたらいいな。





歌うのは今度でもいいだろうか。


パソコンの前から離れる時。
手が滑り、カップが私の手を離れる時。



カップは音を立てて割れ、破片が足元に散る。

……別に痛さも感じないし、踏んでもいいか。

踏みつけた破片に薄く血がつく。


やっぱり痛みは微塵も感じなかった。



『……変わった、けど変わんない』



変われない、なんだろうな。


やっぱり、記憶を失って新しくなったって、



変われない。

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