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相川の口調は普段と何も変わらない、いつもの彼の、平坦なそれだった。そこからはどんな感情も、読み取ることはできない。

感情が顔に出ない。

ただ__機嫌は悪いように思えた。

とても悪いように思われた。


「迷い牛という怪異は、目的地に向かうのに迷う怪異ではなくて、目的地から帰るのに迷う怪異__なのだそうだよ」

「か__帰るのに?」

「往路ではなく復路を封じる__そう」


行きではなく__帰り?

帰るって……どこに帰るんだ。

自分の__家?

来訪と__到着?


「え、しかし__それがどうしたっていうの? いや、話はわかるけど、で、でも__浦田くんの家は……別に浦田くんは家に帰ろうとしているわけじゃないでしょう? あくまで、高橋家っていう目的地に向かっているのであって__」

「だから__僕はあなたに謝らなくてはならないんだよ、Aちゃん。でも、それでも、言い訳をさせて。悪気があったわけではなかったし……それに、わざとでもなかったの。僕はてっきり、僕が間違っているんだと思っていたんだよ」

「…………」


言っていることの意味がわからない__が。

酷く意味がありそうだと__直感できた。


「だってそうでしょう? 二年以上もの間、僕は普通じゃなかったんだもの。つい先週、ようやく普通に戻れたばかりなのだもの。何かあったら__僕の方が間違ってると思ってしまうのも、仕方がなかったんだよ」

「おい……相川」

「僕のときの蟹と同じで__迷い牛は理由のある人の前にしか現れないそうだよ。だから、Aちゃんの前に現れたというわけ」

「……いや、だから、蝸牛が現れたのは、私の前じゃなくて、浦田くん__」

「浦田くん、だよね」

「…………」

「つまりね、Aちゃん。母の日に気まずくて、弟さんと喧嘩して、家に帰りたくない、Aちゃん。その子__浦田くんのことなのだけれど」


相川は浦田くんを指さした。

つもりなのだろうが__





それは、全然違う、あさっての方向だった。





「僕には、見えないんだよ」





ぎょっとして__私は思わず、浦田くんを見た。

小さい身体の、利発そうな男の子。

灰茶色の、眉を出した外ハネ。







大きなリュックサックを背負ったその姿は__







どこか、蝸牛に似ていた。

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灰猫(プロフ) - 紅茶さん» 紅茶さんコメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ありません(><) Twitterですが、アカウントを作り次第わたるマイマイ其の参の方にリンクを貼らせて貰いますのでもう少々お待ちくださいませ!! (2020年4月28日 0時) (レス) id: cd0e1b19a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - Twitter教えていただきたいです!都合上いいねとフォローしかできませんがそれで良ければお願いします! (2020年4月4日 19時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - しのみやさん» しのみやさんコメントありがとうございます!これからも是非楽しく読んでやって下さい(*^ ^*) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや - 化物語も歌い手さんも好きなのでとても楽しく見させてもらってます! (2020年3月31日 18時) (レス) id: 5d97f4e4ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月29日 14時

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