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あれから。
私、阿良々木蒼音と相川真冬、それに浦田渉の三人は、五度のリトライ、コンテニューを試み、法律間際の近道も気が遠くなるほどの遠回りも例外なく全て試してみたが、しかし、結果から言うと、それらは全て、見事なまでの華々しい徒労に終わった。
間違いなく、目的地の辺りに自分達がいることは確かだったが__けれど、どうしてだか、そこに辿り着くことは、できないのだった。最後には一軒一軒、しらみつぶしに探して回るみたいなローラー作戦までやってみたけれど、それすらも徒労にだった。
では、最後の最後の手段ということで、相川が、携帯電話の特殊機能で(私はよく知らない)、GPSだかなんだかのナビゲーションシステムを作動させようとしたが__
データのダウンロード寸前で、圏外になった。
その時点で、ようやく__あるいは不承不承、遅ればせながら、私は、この場で何が起こっているのかを、完全に理解することができた。決してそうは言わなかったけれど、相川は、それをどうやら、かなり早い段階から察していたようだが__それに、誰より、一番深く状況を理解していたのは、恐らく、相川のようだったが、とにかく。
私は鬼。
天宮は猫。
相川は蟹。
そして浦田くんは蝸牛のようだった。
となると__そういう状況になってしまうと、私としては、そこで物事を投げ出すわけにはいかなくなった。これが普通の迷子ならば近所の交番に届けてそれで一見落着といきたいところだったが、あちら側の世界が噛んでいるとなれば__
相川も、交番に浦田くんを任せるのは反対した。
数年間__あちら側に浸っていた、相川。
その相川が言うのだから__違いあるまい。
とはいえ、勿論、私や相川で、どうにかなるような問題じゃない__私も相川も、ただ単に、こちら側とあちら側があるということを、知っているというだけだ。
知は力、なんて言っても。
知っているだけでは、それは、無力だ。
だから私達は__あまり気の進む選択肢でもなかったけれど、議論の末、最終的には__歌詞さんに相談することにした。
伊東歌詞太郎。
私の__私達の恩人。
しかし、彼が恩人でもなければできればお付き合いを遠慮させていただきたい種類の人間であることは間違いがなかった。三十を過ぎても未だ定住地を持たず、一ヶ月ほど前からはこの町の、潰れた学習塾を寝床にしている__なんて、そんな現状を説明しただけでも、普通の人なら引くだろう。
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灰猫(プロフ) - 紅茶さん» 紅茶さんコメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ありません(><) Twitterですが、アカウントを作り次第わたるマイマイ其の参の方にリンクを貼らせて貰いますのでもう少々お待ちくださいませ!! (2020年4月28日 0時) (レス) id: cd0e1b19a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅茶(プロフ) - Twitter教えていただきたいです!都合上いいねとフォローしかできませんがそれで良ければお願いします! (2020年4月4日 19時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - しのみやさん» しのみやさんコメントありがとうございます!これからも是非楽しく読んでやって下さい(*^ ^*) (2020年3月31日 23時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
しのみや - 化物語も歌い手さんも好きなのでとても楽しく見させてもらってます! (2020年3月31日 18時) (レス) id: 5d97f4e4ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月29日 14時