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警戒するように、無口になっている。子供ながらに、あるいは子供であるがゆえに、私よりも相川の方が危険人物だということが直感できたのだろうか、さっきからずっと、こいつは私を壁にする形で、相川を避けているのだった。
まあ、人間が人間を壁になんかできるわけがないのでバレバレだし、しかもそのせいで、相川を露骨に避けていることが見え見えなので、それは第三者的にも状況としては気分が悪いくらいだったが、それでも、相川の方も、お子様の浦田くんを全く相手にしていないようなので(『こっちだよ』とか『この道を行くの』とか、私に向けてしか言わない)、まあ、お互い様だった。
間に挟まれた私はたまったものではないが。
もっとも、さっきからの様子を見ていると、相川の場合、子供が嫌いとか子供が苦手とか言うより、ただ、よくわからない__みたいな反応のようにも、思えるけれど。
「売っちゃったわけだし、家が残っているとは思っていなかったけれど……まさか道になっているとはね。これはさすがに、結構ブルーだよ」
「まあ……、そりゃそうだよね」
それには同意するしかなかった。
想像するのに余りある。
公園からここまでの道程にしたって、古い道路と新しい道路が入り混じって、あの公園の看板にあった案内図、住宅地図と、全く違う様相を呈しているというのだから__この辺りに特に思い入れのない私だって、何か、モチベーションが削がれていくような気分だった。
仕方のないようなことだけれど。
人が変わるように、町並みも変わるのだ。
「ふうっ」
相川は、大きく息をついた。
「どうしようもないことで時間をとらせてしまったね。行きましょうか、Aちゃん」
「ん……もういいの?」
「いいんだよ」
「あっそ。じゃ、行くよ、浦田くん」
浦田は無言で、こくんと頷いた。
……ひよっとして、声を出すと相川に居場所がばれるかもしれないと思っているのかもしれなかった。
一人、さっさと足を進める相川。
それを追う、私と浦田くん。
「ていうか、いい加減に私の脚から離れなよ、浦田くん。歩きにくいんだよ。全く、ダッコちゃんみたいにしがみつきやがって。こけたらどうすんの」
「…………」
「何か言いなよ。黙ってないで」
そう強要すると、浦田くんは、
「おれだって、阿良々木のか細い脚なんかにしがみつきたくねえよっ」
と言った。
無理矢理引き剥がした。
べりべりべりっと、音__は、しなかったが。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時