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頭に肘鉄を入れられた、そちら側の腕を__感覚的に、左__いや、裏返っているから、右腕か、右腕をつかんで、その位置から再度、やり直しの、一本背負い__!
今度は__決まった。
浦田くんは背中から地面に、叩きつけられた。
反撃に備えて距離を取るが__
起き上がってくる様子はない。
私の勝ちだった。
「全く、馬鹿な奴め__小学生が高校生に勝てるとでも思ったか! ふははははははははは!」
小学生男子を相手に本気で喧嘩して、本気の一本背負いを決めた末に、本気で勝ち誇っている女子高校生の姿が、そこにあった。
ていうか私だった。
阿良々木Aは、小学生男子をいじめて高笑いをするようなキャラだったのか……自分で自分にドン引きだった。
「……Aちゃん」
冷めた声をかけられた。
振り向くと、そこには相川がいた。
見ていられなくて、寄ってきたらしい。
とても怪訝そうな顔をしていた。
「地獄まで付き合うとは言ったけれど、それはAちゃんの小ささにであって、痛さとか、そういうのはまるっきり別だから、そこのところを勘違いしないでね」
「……言い訳をさせてください」
「どうぞ」
「……………………」
言い訳なんてなかった。
どこを探しても出てこない。
というわけで、仕切りなおす。
「まあ、過去のことは置いておいて、この子__」
倒れたまま起き上がらない浦田くんを指さして、私は言う。背中から落ちたのだから、背負っているリュックサックがいいクッション代わりになっているはずだ、大丈夫だろう。
「なんか、道に迷っているっぽいんだよ。見たところ、親とか友達とかと一緒にいる風でもないし。あー、私、朝からこの公園にいるんだけどさ、この子、相川が来る前にも一度、この看板、見てたんだ。そのときは別に何とも思わなかったんだけれど、本格的に迷ってるってことでしょ? 誰か心配してる人がいたら厄介だろうし、なんか力になれるかなって思って」
「……ふうん」
相川は、頷きはしたものの、怪訝そうな顔つきは変わらなかった。まあ、その結果どうして取っ組み合いの喧嘩になるんだと、訊きたい気持ちも山々だろうが、それについては何とも言えない。戦士と戦士の魂が呼応したのだとしか言いようがない。
「そう」
「うん?」
「いや、なるほど……事情はわかったよ」
本当にわかってくれただろうか。
わかった振りをされているだけだったりして。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時