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「警戒のレベルは下げよう」
「そりゃ助かるよ」
「じゃあ、人畜」
「人畜!? 誰のことだ、それは!?」
うわあ……。
四字熟語ならばなんてことない普通の言葉なのに、下半分を削るだけで、そこまで圧倒的に侮蔑的な言葉になってしまうのか……私は今まで、なんて言葉を平気で使ってきたのだろう。どころか、使うだけでは飽きたらず、自分から名乗ってしまった……。
「怒鳴られたっ! 怖いなお前っ!」
「いや、怒鳴ったのは悪かったけど、でも、人畜は酷いって! 誰でも怒鳴るって!」
「そうか……でもお前の方から言い出したことだ。おれはそれに誠意をもって応えただけだ」
「誠意がこもっていればそれで何でもいいってもんじゃないんだ、世の中は……」
実際には、この場合、人畜というのは『人と家畜』という意味合いで、別に人を批難するような意味合いではないのだが……それでもだ。
「つまり、人畜無害は略したら駄目な言葉なんだよ」
「へえ、そうか。なるほどな。つまり素っ頓狂という言葉みたいな感じだな。興奮すると『スットンキョー!』と奇声を発するキャラを受け入れることはできても、『頓狂な行為に身を任せる男であった……』なんて地の文で紹介されてしまうキャラは受け入れられないのと、同じようなものか」
「どうかな……私は興奮すると『スットンキョー!』と奇声を発するキャラを受け入れることはできそうにないけど……」
「じゃあ、何て呼べばいい」
「そりゃ、普通に呼べばいいよ」
「なら、阿良々木で」
「うん。普通でいいね。普通最高」
「おれ、阿良々木のことが嫌いだ」
「…………」
何一つ改善されていなかった。
「臭いっ! おれに近寄るなっ!」
「男臭いより酷くなった!?」
「む……確かに、いくらなんでもただ臭いとは、酷い形容だったかもしれねぇな。訂正しよう」
「ああ、してくれるもんなら」
「水臭いぞっ! おれに近寄るなっ!」
「意味が前後で支離滅裂だ!」
「なんでも構わねぇっ! 迅速にどっか行けっ!」
「いや……、だから、きみ、迷子なんでしょ?」
「この程度の事態、おれは全く平気だっ! この程度の困りごとは、馴れっこなんだっ! おれにとっては普通のことだっ! おれ、トラベルメイカーだからっ!」
「旅行代理店勤務だと!? その歳でか!?」
確かにそれが本当なら、迷子なんてなるわけがないだろうが。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時