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「幼稚園くらいは目隠ししてても卒園できるわ!」
「それはいくらなんでも自分を高く評価し過ぎだよ」
「突っ込みに駄目出しが入った!?」
「思い上がりには感心しないね」
「私はお前に感心してきたよ……」
「真面目な話、『渉』くらい、誰でも読める漢字なんだけれど。小学生でも、知っていそうなものだよ。Aちゃんの場合、聞くも聞かぬも、等しく一生の恥と言う感じだね」
「あー、はいはい。どうせ私には学がないよ」
「自覚があるのは自覚がないのよりはいいことだなんて思ったら大間違いだよ」
「…………」
私、こいつに何か悪いことしたっけなあ。
お返ししてもらうとかいう話をしていたはずなのだが……。
「ったく……。ああ、まあいいや。とにかく、じゃ、あれは『うらたわたる』ってことか……ふうん」
変わった名前。
まあ、そうは言っても、『相川真冬』とか『阿良々木A』よりは一般的かもしれない。とにかく、人の名前についてあれこれいうのは、あまり上品な行為ではない。
「えっと……」
と、相川の方を窺う。
うーん。
こいつ、どう考えても、子供が好きってタイプじゃないよな……転がってきたボールを、平気で反対方向に投げてしまいそうなイメージがある。泣いている子供をうるさいという理由で蹴飛ばしそうだ。
となると、一人で行くのが無難か。
これがあるいは相川ではなく別の奴なら、子供の警戒心を解くためには、子供と同性を一緒に連れて行った方がよくはあるのだが。
やむかたなし。
「ねえ、ちょっとここで待っていてくれる?」
「いいけれど、Aちゃん、どこかに行くの?」
「小学生に話しかけてくる」
「やめておきな。傷つくだけだよ」
「………………」
本当、酷いことを平気で言うよなあ、こいつは。
いいや、後で話し合おう。
浦田渉。
私はベンチから立って、広場を挟んだ向こう側__案内図の看板の位置、そのリュックサックの男の子の位置まで、小走りに近付いていく。男の子はどうやら地図とメモとの照らし合わせに必死らしく、後ろから寄っていく私には気付きもしない。
一歩分、距離を置いた場所から、声をかける。
できるだけ、フレンドリーに、気さくな風に。
「やっ。どうしたの、道にでも迷ったのかな?」
男の子は振り向いた。
明るめの灰茶色の髪を真ん中分けにした、眉を出した髪型に、挑戦的な緑の目。
利発そうな顔立ちの男の子だった。
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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時