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「あいつら、二人とも、母親にべったりでさ__で、母親の方も、そんな二人を、猫っかわいがりしてるわけよ。で__」

「なるほど」


そこまでで得心したと言う風に、相川は私の言葉を止める。みなまで言うなとばかりに、私の言葉を最後まで待たない。


「出来の悪い長女としては、母の日である今日本日この日、自分の家には居場所がないというわけだね」

「……そういうこと」


出来の悪い長女、というのは、相川にしてみればいつもの調子の暴言のつもりだろうけど、残念ながらそれはそのまま誇張されているわけでもなんでもない事実なので、私は、肯定することしかできなかった。

居場所がないとまではいかずとも。

居心地が悪いのは確かだった。


「それで、こんなところまでツーリングというわけ。ふうん。でも、わからないね。それでどうして弟さんと喧嘩になるのかな?」

「朝早い内に、家をこっそり抜け出そうとしたんだけど、マウンテンバイクに乗ったところで、弟に捕まったの。で、口論」

「口論?」

「弟としては、私にも一緒に、母の日を祝って欲しかったらしいんだけど__なんていうか、私は、そんなの、無理だから」

「無理、ねえ。だから、か」


相川は意味深長に、そう反復した。

あるいはこう言いたかったのかもしれない。

贅沢な悩み、だと。

母子家庭といえ、ほとんど一人暮らしの相川からみれば__そうなのだろう。


「中学生くらいの男子って、お母さんを嫌うことが多かったりするけれど__女子も同じように、お母さんを苦手とするものなのかな?」

「はあ……いや、苦手ってことじゃないし、嫌いってわけでもないんだけれど、気まずいっていうか、まあ、それは、弟についても、ほとんど、同じことで__」


___姉ちゃんは、そんなことだから。


___そんなことだから、いつまでたっても___


「……けどね、相川。そんなことは、問題じゃないんだ。弟との喧嘩とか、母の日とか、それ自体は別に、どうでもいいんだよ__今回に限らず、なんかイベントがある日には、よくあることだから。たださあ」

「ただ、何」

「つまりだよ。いくら色々あるとは言っても、母の日一つ祝ってやれない自分とか、四つも年下の弟から言われた言葉に本気で腹を立てている自分とか、そういう、なんていうか、じぶんの人間の小ささみたいなのが、腹立たしくて腹立たしくて、しょうがないんだよ」

「ふうん__複雑な悩みだね」


相川は言う。

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名無し16825号(プロフ) - ありがとうございます!これからも楽しみに待たせていただきます! (2020年3月28日 9時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - 名無し16825号さんコメントありがとうございます!そう言っていただけてとても光栄です!この二人が付き合うかどうか等も今後の更新で分かりますので、ゆっくりですが今後も気長に更新を待っていただけると嬉しいです! (2020年3月28日 5時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - ところでこの二人付き合うんでしょうか?(( (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)
名無し16825号(プロフ) - すごく続きが気になります!面白かったです更新頑張ってください! (2020年3月27日 22時) (レス) id: 8fbf982787 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月26日 1時

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