さくらのはなびらたち【短編集】 (ページ6)

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目「すごい怪我だけど、」

『ほんと？そんな痛くないよ』

目「ガチで心配した」

『ごめんねぇ、骨とか折れてなかっから帰れる〜って思ったんだけどさ、白杖折れちゃって。

そしたら駅員さんが慌てた声で来たもんだからさ、甘えちゃった！…ごめんね、仕事中だったでしょ』

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俺の声を頼りにふわふわと空中を揺らぐ視線。

本人はそうでも無さそうだけど、本当に何が起こるかわからないAの世界。

危険性が高くて、健常者の俺はどうしても何がある度にヒヤヒヤしてしまう。

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"頭は打っていない様でしたが、数時間様子見させていただいて特に異常無いので、ご帰宅して大丈夫ですよ"

目「ありがとうございます、お世話なりました」

『手当とか、ありがとうございました！』

"いえいえ、また困ったことがあればお声掛けください"

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俺の腕を掴んでてくてくと歩くA。

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『あ〜あ、白杖新しいの買わなきゃなぁ』

目「…白杖が折れただけでよかったよ」

『あ、また心配してるでしょ？相変わらずお父さんみたい』

目「心配にもなるだろ、」

『………私が目、見えないから？』

目「…………」

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Aの明るい声が、沈む。

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『こう見えても昔は見えてたんだよ？ハッキリじゃないけどさ、何となくね。

でも今はもうほぼ見えないし、蓮くんの姿だってぼけ〜って、シルエットだからさぁ。

…んで、今の私には音と白杖しか頼りがないじゃん？』

目「…」

『目が見えないと、白杖なきゃこうやって駅員さんとか警察の方にお世話になりっぱなしだしさぁ〜…、

困っちゃうよね、ほんと』

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Aは進行性の障害だった。

だんだん目が見えなくなっていって、最終的には全盲になる。

昔から目が見えないことに対してポジティブで、明るくて、そんな姿に尊敬して、好きになった。

これからは俺が守る、なんて思っていたのに、

こうやって守りきれない俺自身に、苛立ちを覚える。

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