結婚恋愛６ (ページ28)

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チェンジ・ザ・ワールドページ28

出来上がったリングを見つめたらため息が出そうになった。
内側に刻まれたのはプロポーズをした日付と二人のイニシャル。

「こちらのシャンパンもお持ちください。」

丁寧にリボンを掛けられた箱と、シャンパンを入れられた紙袋を手に店を出てタクシーを止めた。
車窓から見える風景がいつもより輝いて見えるような気がした。
何も変わらないはずなのに。

ポケットの中のMP３を取り出して、イヤホンを耳にねじ込んだ。
再生ボタンを押して流れてきたのはエリック・クラプトンのチェンジ・ザ・ワールド。
この歌詞のように、自分が世界を変えることができるのだろうか。
Aの世界を。
リピートモードで繰り返される曲に瞳を閉じた。

２０分もすればマンションについて、財布から出したお金を運転手に渡した。
エレベーターの上昇とともに自分の鼓動が早くなるような気がする。
もうとっくに答えはもらっているのに。
フロアに降り立って一つ深く息を吸い込んだ。

カギを差し込む手が少し震えていて笑ってしまった。

「俺、バカだな…。」

カギを開けて玄関に立つけど、迎えに来るはずの人物は来なかった。
代わりにあるのは二人で作ったパズルと、玄関の上に置かれたボックスに収められたハイヒールとホワイトローズ、ハナミズキ。

「A？」

リビングは暗くて、でも暖かいからきっとどこかにAは居るはずだ。

「ハッピーバスデー、ユノ。ほら、願い事しながら吹き消して。」

ケーキに飾られた数字のキャンドルの光を吹き消した。

「ありがとう。」

本当にホッとするし、暖かい気持ちが心の中を占領していく。

「ふふふ。でも、プレゼントは無いよ？だって何がいいか全然思いつかなかったし。」

キャンドルライトの中で笑ったAを見たらそれだけで十分だった。