Guilty (ページ10)

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気づかれるページ10

「契約条件とかは見直したりしたことあるんだっけ？」

山崎から声をかけられて見上げると書類を手に山崎が立っていた。

「何度かはあります。」

「じゃあ、大丈夫かな。
とりあえず、この契約条件を見直してみて。
あと、今からエイベックスに出向くから。」

ジャケットを羽織るとバッグに書類を詰めて山崎の後に続いた。
地下鉄を乗り継いで降りたのは青山。
近隣には芸能事務所も何か所かある。

受付で新しく作られた自分のカードを見るが、写真写りは最悪だ。
そのカードを首から下げてエントランスを通過して止まったエレベーターに乗り込んだ。
ふと視線を感じて主を見つけた、その人はあの時と同じでふんわりと笑っていた。

「お久しぶりです。足は大丈夫でした？」

眼鏡姿とコンタクトの姿の自分が同一人物だと気づかれたのは初めてだった。
山崎でさえあの日の自分になかなか気づかなかったというのに、一度しか会っていないし、さほど長い時間を過ごしたわけではないのに気付かれたことに衝撃を受けた。

それにあの時の華やかな格好と、今ではまるで真逆だ。
安物ではないが、リネン素材のベージュのジャケットにネイビーのスカート。
パンプスはローヒールのオープントウ。
なんだか気恥ずかしいほど地味な自分と、普段着なのに花がある彼とは対極的だった。

「あ、はい。
先日はお世話になりました。おかげさまで翌日には大丈夫でした。」

「よかった。」

向けられた笑顔があまりにもまぶしくて目を背けると、彼らの降りるフロアにエレベーターが止まってマネージャーと、笑顔の主の隣に居た長身のくせ毛の男性が降りて行った。

「じゃあ、また今度ね。牧野さん。」

そう言って、手を振る彼が立ち去るのと同時にエレベーターのドアが閉まった。