Guilty (ページ49)

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忘れられた約束ページ49

早めのランチを終えてからSMEの本社に向かった。
出迎えてくれたイ・ジフンは眼鏡をかけた一重の涼しい中年の男性だった。
一目見ただけで弁護士とわかるスーツと風貌に緊張したが、英語が話せるということもあってさほど困りはしなかった。
ただ、ちょっと韓国なまりの強い英語だったから理解するのに時折時間は必要だった。

お互いの必要書類を見直して話を詰めていく。
特に東方神起の利権に関するものは話の半分ほどを占める。
エイベックスにとってもSMにとってもどれだけ利益を生んでいるかよくわかるというところだろうか。

ハングルで書かれた書類と、日本語で書かれた書類そして中立的な英語で書かれた書類。
全書類に共通の内容が書き示されて初めて契約を成立させる。
どちらかの文章の解釈によっては双方の解釈が間違ったものに発展し、それがトラブルの火種とならないようにグレーゾーンは作らない。

渡辺に念を押されていたし、元々契約という側面はドライで非常にロジカルでなければならない。
でも、そこには表面上とても友好的態度を必要とするのは普遍的であろう。

「ミズ・マキノ、今日はユノがエスコートすると聞いてますけれど、ミスター・ワタナベはエスコートするお相手は決まってますか？」

ジフンがにこやかに笑って言った言葉でユノが自らエスコートすると言っていたことを思い出した。

「あっ…。」

「まさか忘れていたのですか？」

「…はい…。」

すっかり忘れていて、渡辺にエスコートされるつもりでいたし、ドレスも日本で着たものを持ってきてしまった。

「おい、牧野そんな約束してたのか？」

渡辺が困惑した顔で自分を見つめた。

「はい…クリスマスパーティーの時にした約束をすっかり忘れていて…。」

ジフンが日本語での会話に困惑した表情を見せたので、英語で答えた。

「ユノとの約束を忘れるなんてなかなかなお嬢さんだね。」

ジフンが豪快に笑った。
でも、Aは苦笑するしかできなかった。

「俺は、1人ってことになるな…。」

「では、うちの秘書を同行させましょう。私は妻と出席しますから。」

「それは助かります。」

ジフンと渡辺が笑いあっていた。