Guilty (ページ32)

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二つの目ページ32

年末の仕事も終わり、帰宅する途中でクリーニングに出したドレスを受け取った。

それをクローゼットにかけるとため息が出そうなほど美しい。
繊細なレース、艶やかなシルクサテン。
あの時、小指に絡ませた長い指を思い出す。

年が明けたら韓国に行く予定だ。今度は山崎ではなく渡辺と。

クリスマスのパーティーのことと、年始の韓国のことを考えるだけで胸が躍るのに、その間にある明日からのことを考えたら頭が痛い。

既に気分はどん底に近いほどだ。

華美なものをAが着るのを好まない。アクセサリーでさえ快く思わない。
許されたのは腕時計だけ。
それもこの家に居る時には必要がない。自分の時間なんてないに等しいから。

門の前に立って息を深く吸い込んでからくぐり戸を開けた。

相変わらず丁寧に選定された庭の木々に、落ち葉一つない敷石の上をローヒールで歩く。

自分が物心ついたときと何一つ変わらないこの家。

変わったのは住んでいる人間が主人とその妻、二人の家政婦だということだけだ。

「ただいま帰りました。」

声を掛けると家政婦の今井が静かに迎えに来た。

「お嬢様お荷物を。」

そういわれて荷物を差し出した。

その後に現れたのは無地の上等な着物に身を包んだ初老の養母。

「Aさん。時間通りに来たのね。司さんはまだ来ないのよ。
　突っ立ってないで早くおあがりなさい。
　お父様がお待ちよ。」

この二つの目にはいつも威厳と威圧感が備わっている。
幼いころから怖くて仕方がなかった。

「はい、お母様。」

俯いたまま玄関に上がり、靴をそろえて端に寄せた。