Guilty (ページ27)

今日:8 hit、昨日:10 hit、合計:73,770 hit

笑顔ページ27

志保から先に会場に行くように言われてエレベータで会場のあるフロアに降りた。
山崎がせわしなく時計とエレベーター付近を見つめているが、自分の存在を認識していないことに気が付いた。
当たり前だ。
いつもはこんなに露出度の高いドレスは着ない、いつもより少し濃い目に施された化粧の所為で気が付かない。
クロークにすべて荷物を預けてきたから持たされたのはスワロフスキーのクラッチバッグ。
口紅と名刺とスマホを入れたらもう中身はいっぱい。
バッグとしての役目は果たしていないに等しい。

「山崎さん？」

その後ろ姿にそっと近づいて声を掛けた。

「牧野？」

「はい…。」

「お前、今日は一段と…。」

背中まで回り込んでギョッとした。

「やっぱりおかしいですよね？」

やっぱり自分にはこのドレスは大胆すぎるし、華美すぎる。

「いや、綺麗だよ。今までで一番って言っていいかな。」

山崎は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「…。」

「お前をエスコートできると思うとなんか嬉しいよ。
こんな美人の横に立てるって男冥利に尽きるからな。」

「山崎さん、奥様がいらっしゃるでしょう？」

「うちの奥さんは美人じゃないよ。まあ、愛嬌のあるタイプだから。
でも、ピカイチでいい女だよ。」

ニコニコと笑って愛しそうに眼を細める姿が、妻を何より愛している証拠だ。

その姿が可愛いというかおかしくて笑ってしまった。

「牧野、お前はもっと笑えよ。
お前の笑顔って凄い可愛いし、いい笑顔だから。」

「あっ…。」

いつからか自分があまり笑わなくなったことを思い出した。

「ま、今日は俺がエスコート。ほら腕組めよ。
寂しい中年に優越感を与えてくれよ。」

山崎が腕を差し出すのでその腕に自分の腕を絡めた。