Guilty (ページ24)

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掌握術ページ24

「あ、牧野さん！」

いつもの会議室で資料整理と書類作成をしているところに志保が現れた。

「志保さん。やっと会えました。ずっと会いたくて。」

「衣裳部屋に会いに来ればいいのに。」

「だって、あそこは踏み込みづらいフロアだし…。」

志保が居るエリアはとても踏み込みづらい。
タレントやアーティスト、女優が行き来する中に自分はどう考えても浮くし落ち着かない。

「牧野さんらしいわね。」

志保はAらしい答えにクスクスと笑ってしまった。

「明後日、うちの会社のクリスマスパーティーでしょ？」

「はい。」

「着ていくものはこっちで準備するし、メイクもするから、仕事終わったら私が泊まる部屋まで来てもらってもいい？」

「ああ、はい…。」

「じゃ、決まりね～。じゃあ、明後日の夜に。」

手をひらひらさせながら部屋を出て行った。
ユノといい志保といい、芸能界の人間は相手に選択肢を与える隙さえもたらせないほど掌握術に長けていると思う。

まあ、弁護の仕事においての交渉に関しては自分も少しは自信があるし、論理的な答弁は得意な方だけど、自分という人間にはあまり自信が持てないから大胆な行動には出られない。

それが生育環境がもたらした結果だということは言うまでもない。

そう考えたら年末の実家というべき場所に帰るのが憂鬱になった。
あの家はいつだって自分を劣等感と孤独感を押し付けてくる。
一年に一回行くだけなのに。できれば一生近づきたくない家だ。