結婚恋愛 (ページ22)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:212,164 hit

懐いたバンビページ22

「ああ、須賀さん、今回のは結構時間がかかりそうで…。」

そう言って、開いたドアの方を振り返るとチャンミンが立っていた。

「あ…昨日はどうも。」

入ってきた人物が須賀かと思っていたのに、そこに立っていたのがチャンミンだったものだから驚いて目を丸くした。

「勝手に会計して帰るってどういうことですか？
　あそこまでやられると男として情けないです。」

少し怒っている。元々、女性に自分以上に何かをされるのがあまり得意じゃない。

「あら、いいじゃん。私のカウンセリング料だと思って。」

Aはチャンミンが負担に感じないようなジョークを口にした。

「俺のカウンセリング料は高いよ？」

切り返しの速さにAの賢さが表れているような気がした。
年齢を重ねているのかジョークのセンスも身に着けている。

「あ、そういうこと。
　またあの店行きたいの？
　あと２～３回奢ったらチャラにしてくれる？」

Aはチャンミンのジョークから少し察したようにクスクスと笑いながら答えた。

「そのたびに、上乗せされるから永遠に行き続けなきゃいけなくなりますよ。」

チャンミンもつられて笑った。Aと居ると楽しい。
昨日と今だけでAの印象は初対面の時からガラリと変わった。
色々な表情や、側面を見せてくれる。
ひねくれ者だと自分でも言っていたけれど、それだけじゃない。
本当のAは繊細で純粋な気がした。

「あはは、確かに。」

傍にあった魔法瓶からコーヒーをカップに注いでチャンミンに差し出した。
それを受け取ってAの作業している作品を眺める。

「今回のはちょっと細かいんですか？」

確かに図案からしても細かい箇所が多い。

「そうだね。ちょっとね。」

「それにしても綺麗ですね。」

テーブルに置かれた出来上がった20枚を眺めながらチャンミンがつぶやいた。

「ありがとう。でも、２年くらいしかやってないの。
　こんな仕事二度と来ないと思って、大切に仕上げてる。」

チャンミンと少し離れて椅子にもたれながらコーヒーをすすった。

「普通に食べていけそうな気がしますけどね。」

チャンミンはしあがったものを目をキラキラと輝かせながら手に取っていく。

「そんなこと言ってくれるのはチャンミンだけだよ。」

ドアの外でそっとユノが聞いているのも知らずに2人で笑いあっていた。