結婚恋愛 (ページ21)

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餌づけページ21

「おかえり。遅かったな。」

リビングでテレビを見ていたユノが振り返った。
その隣にどさりと腰を下ろした。

「ヒョン、女性に食事と酒を奢られことありますか？」

帰ってくるなりチャンミンがした質問に何気なく答えた。

「ああ、そりゃないね。」

韓国の男性ならそうだろう。女性に奢ることはあっても奢られることはない。
ましてや二人で食事に行ったらなおさらだ。

「俺、今日初めて奢られました。気づかない間に。」

「お、相手は誰？」

ユノは興味津々にチャンミンを覗き込んだ。

「Aさんです。」

チャンミンは顔を両手で覆った。

「へ？誰？」

名前を言われてもピンとこない。

「ほら、切り絵の。」

少し荒っぽくわかりやすいフレーズをぶつけた。

「ああ、なんでまた。」

そう聞かれて、事の経緯を話して、それから彼女との会話も全て話した。
そして話し終えるとシャワーを浴びてベッドに横になった。

「マネヒョン、彼女は今日も来てますか？」

休憩の合間にチャンミンが宮田に尋ねた。

「彼女？…ああ、川名さんのこと？」

宮田とチャンミンの間で彼女で表現される共通人物はAくらいのものだ。

「そうです。」

「いると思うよ。４階の会議室。」

何度か見に行っているから、よく覚えている。

「ちょっと見てきていいですか？」

少し長い休憩中だから別に問題がないはずだ。

「いいけど。」

答えを聞き終わらないうちに練習室を飛び出した。

「チャンミンが１回しか会ってない相手に興味持つなんて珍しいな。」

宮田が、ドアから飛び出していくチャンミンの後ろ姿を不思議そうに見つめた。

「あいつ単純だから。うまい餌と酒につられたんでしょ。」

ユノがぼそりと呟いた。

「ん？どういうこと？」

宮田が聞き返した。

「いや、こっちの話。彼女しばらくはここに通ってくるの？」

「そうだな。まだあと２０枚は作らないといけないって言ってたから。」

「そっか。ちょっと、俺も見て来ます。」

ユノも足早に部屋を出て行った。