結婚恋愛 (ページ17)

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焼き鳥の極意ページ17

「乾杯」

ビールジョッキにグラスをコツンと当ててからカシスウーロンを半分ほど飲み干した。

「こういうとこイヤだった？」

今更だろうと思ったが、嫌いじゃない。思ったほど汚くないし、なんだかくつろげる空間。

「いいえ。」

チャンミンからは警戒心しか漂ってこない。

「おいしいから食べて。」

割り箸を差し出されてフグ皮のポン酢あえを食べた。
さっぱりとしたポン酢の中にゆずと、唐辛子の刺激が程よい。
Aがその間に箸袋で器用に箸置きを作ってくれた。

「安くて、おいしくて、学生のお財布に優しい居酒屋なの。３６歳女子大生の現実。」

少し自虐的に笑うAに興味をそそられた。

「お待たせ。」

ふすまを開けて手際よく並べられた料理はどれも高タンパクなもの。

「焼き鳥はすぐ食べないとダメ！ほら早く。」

そう言って食べるのを急かされた。

「おう、そうだ兄ちゃん。焼き鳥は焼いてから９０秒が勝負なんだよ！」

店主が豪快に笑ってサラダと刺身に鳥のささ身の梅しそ巻きを置いていった。

「おいしいでしょ？」

Aが自慢げにチャンミンを覗き込んだ。

「ああ、はい。」

周りがこんがりと焼きあがりパリッとした触感なのに対して中はジューシーだ。

「ね、敬語やめない？」

グラスを揺らしながら小首を傾げてチャンミンを見つめた。

「でも、あなたは年上だし。」

さっきよりは警戒心が大分ほぐれた。おいしいもので満たされる心地よさは格別だ。

「だとしても、なんか変だから。いつもの毒舌になってもいいと思うんだけど。」

最初の印象と大分違う。ポーカーフェイスなんて思っていたのに、今日のAはよく笑う。
それに、ちょっと大人の余裕を見せつけられているような感覚になった。

「…。」

ムッとしたようなチャンミンの顔がおかしくて笑い出した。