彼は誰時 (ページ18)

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「明日ちょっと出かけようよ」

『お仕事は大丈夫なんですか？』

「午前中で終わるから、その後になるけどいい？」

『行きたいです！準備して待ってます』

ジョングクさんと初めてするお出かけ。
そう考えるだけで、ふっと頬に力が抜けそうになるのを急いで引き締める。

だめだめ、だらしない顔になっちゃうところだった。

「この家にAの物ほとんどないし、ついでに買っちゃおう」

『そんなのじゃなくて自分の欲しい物にお金かけてください！』

「今俺が欲しいのはそれだからいーの」

ジョングクさんは優しくていい人だ。

あの日助けてくれたことも、その後のことも。

あの日出会ってなかったら、多分私はこんな風に泣いたり笑ったり出来なかったし、もしかしたら存在すらなかったのかもしれない。

『ジョングクさん、ありがとうございます』

「ん？そんなに服欲しかったの？」

『はい、とっても』

正直新しい服も、家具も、そんなに大切じゃなくて、ただ私のために何かしようとしてくれる貴方の優しさが苦しいほどに嬉しい。

私だけに向けられた笑顔が愛しい。

「ジョングクさんは変わってるけど、いい人ですよ」

そんな風に、いつかのセリフにちょっと色をつけて伝えれば、

「だから変わってるは褒め言葉じゃないってば」

ほら、こんなにも眩しい笑顔を見せてくれる。

『でも本当に素敵な人です。ジョングクさんも、周りの人も』

「周りの人っていうのが余計」

聞き心地の良い柔らかい声、ふにゃっと下がる目じり、ちょっと気に入らなさそうに膨れた表情、全部全部私にはきらきら輝いて見えて、

その度にジョングクさんは私の心を暖かく染めてくれる。

私、この人が好き。

その気持ちが溢れ出しそうで胸がいっぱいで、でも凄く幸せで、こんなにも胸が熱くなる。

ずっと靄がかって見え隠れしていた、私の心の霧がすっと晴れた夜だった。