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逃亡卅弐 ページ33

物心がつかない頃。
私の両親は任務を全うし、殉職した。

顔もわからない。



なので私は宇髄家に居候の身だった。


小さかったので、天元様は家族だと思っていたし、宇髄家が本当の家だと思っていた。


自分だけ名字が違うのなんてこれっぽっちも気にしてなかった。




そして天元様の兄弟はどんどんいなくなってしまった。


幼い私は理解などできていなかったのだけれど。









『天元さま、ないてるの?』



天元様をお兄ちゃんと呼ぶのを卒業した私。

周りに天元様と呼びなさいと注意されたんだっけ。




『…なんだ、こんな所まで一人で来たのか』





天元様を探しに森の奥へ来た。

高い木の上で月を見上げる天元様を見つけたので声をかけたのだ。


なんだかその姿がとても悲しそうで。






『天元さま、さがしにきたの』


『お前はいつも俺の傍にいたがる…』





呆れながらあっという間に下に降りる天元様。





『わたしもお月さま見たいです!』





そう言って先程まで天元様が居た木の上を指さす。


天元様は目をパチクリさせた。
私は早く連れてけと言わんばかりの満面の笑み。






『この俺を使うなんてな。派手に末恐ろしいガキだお前は』


上に連れて行ってもらった私の頭を天元様は笑いながら頭を撫でた。


私は天元様のその温かい手が大好きだった。







その手が止まったとき、ポツリと天元様が呟いた。













『なぁ…俺達はいつまでこうして笑っていられるんだろうな』



『え?』



突然のことに聞き返してしまった。



『お前には難しかったか』

悲しそうに笑う天元様。



きっと兄弟が逝ってしまったのが悲しくてここに一人でいたのだろう。






『わたしはしぬまで天元さまのそばにいます!』



そう言うと天元様が目を見開いた。






『…本当か?』


『?ほんとーです!』



大好きなんだからそばに居るのは当たり前。

私は天元様の兄弟みたいに居なくならない。




………そう思ってたんだけど…。









『…そうだよな、地味に嘘をついたって仕方ないもんな』




天元様は自分に言い聞かせるように言った。





『はい!』


笑顔で頷く私。











『“約束”だ。お前はずっと俺の傍にいろ』




『はい!“約束”です!』







月がそれを見守るかのようにいつもより綺麗に輝いていた。















『破ったら……派手に仕置きだな』




だが、その声は私には届かなかった。

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麗葉 - 堕姫様ってよく考えたら「片付けろ!」とか「花魁の言うことなのだから禿はしっかりこなせ!」ぐらいしか言ってない、、、梅様LOVEです。 (5月17日 0時) (レス) @page42 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 素晴らしい皮肉とツンデレを交えた濃厚なメリバヤンデレ……最高過ぎます。話のテンポも軽快で終わり方も素晴らしいです。書いてくださりありがとうございますm(_ _)m (2023年1月10日 0時) (レス) @page42 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
ザイ(プロフ) - はれて堕姫様推しになりました!!最高です!! (2022年12月10日 8時) (レス) @page42 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
アキ(プロフ) - 堕姫さま、、、、、😭😭😭😭 (2022年10月20日 6時) (レス) @page42 id: 011262e667 (このIDを非表示/違反報告)
バレーボール - 堕姫様推しとしてとても素晴らしい作品に出会えて光栄でした。ありがとうございました。 (2022年2月21日 20時) (レス) @page42 id: a6efa60e38 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤目のなりすまし | 作者ホームページ:http://instagram.com/nuka___1111  
作成日時:2019年9月12日 21時

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