私の客を取らないで【鬼滅の刃】

逃亡廿伍 ページ26

緊張が溶けたようにへなへなとその場へ座り込んだ。


「…夢…？」

そう思い自分の頬を引っ張る。
しっかり痛いし、もう漏れそう。



トイレに行ってからも考え事。

居なくなってしまうとあれは夢だったのではないかと都合のいい解釈をしてしまう。



天元様は堕姫様も殺すと言っていた。


…堕姫様がもしも、もしも死んでしまったら。

私はどう生きていけばいいのだろう。



「……堕姫様…」


ボソッと呟いた。

堕姫様のこと考えていたら口が勝手に。


「あら、この屋敷でその名を言うなと言ったはずだけれど」


目の前で堕姫様の声が聞こえた。
考え事しすぎて前が見えていなかった。



「！！蕨姫、すみません。考え事です独り言です」


出会った時にそう言われていたのに、すみません……。


「独り言で私の名前を言うなんて随分私に夢中ね」

当たり前です。
出会ってからこの数年、蕨姫と共に生きてきましたから。






「あの、蕨姫…」

先程のことを報告しようとした。


…蕨姫はなんと言うだろうか。



初めて会った日、軽く蕨姫には話した。

逃げ出した理由や捕まえにくる人のこと。



それに今西様の件で疑ってしまったことを謝りたかった。


「何？」

「…今西様の件、申し訳ございませんでした！！！」

土下座です。

その姿は顔が豚小屋の頭がこんにゃく野郎の私にピッタリで………。


「はあ？」

「私のお客様が、その天元様で、天元様が今西様を殺したそうで…」





「このポンコツが。ちゃんと喋りなさいよ」


頭を踏まれながら言われました。


この風景はたから見たら、悪役がボスに報告してるシーンみたい………。





「私のお客様の中に変装していたんです、天元様が…」


「逃げ出したのってそいつのとこからでしょ？」


天元という名前を聞いて即座にそう聞いてきた。

さすが蕨姫！！！！！



「はい…それで、天元様が今西様を殺した、と」


今西様を殺したところではなく、別のところを突っ込まれました。





「アンタ、そいつに会ってなんで生きてんの？」

それは私も思いましたけども。



「苦しんで殺す、と言われてそのまま消えてしまいました…」

「へえ」






そしてあともう一つ。

言うか言わまいか迷ったけど。




言うことにした。






「その……だ、堕姫様も…」








「………へえ…」



怖い怖い怖い。

その顔最恐です……。



ですが、最高です。



堕姫様、私は喰われるまで一緒に生きていたいです。

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